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「満蒙開拓団」に参加したある日本人家族の歴史が教えること

新華社 | 2022-03-11 09:37:06 | 編集: 张一

   8日、両親と兄が写った家族写真を見せる満蒙開拓平和記念館の寺沢秀文館長。(長野=新華社記者/冮冶)

   【新華社長野3月11日】記者はこのほど、日本の長野県下伊那郡阿智村にある満蒙開拓平和記念館を訪れ、館長の寺沢秀文さんから「満蒙開拓団」の歴史を聞いた。

   寺沢さんは記者に「兄の生前の写真はこれだけだ」と黄ばんだ白黒の家族写真を見せ、そこに写った日本人女性の腕の中にいる赤ん坊を指さしながら、「この写真を撮ってから半年後、兄は食べ物がなくて餓死してしまった。まだ1歳だった」と語った。

   写真の赤ん坊は1945年2月生まれ、寺沢さんの兄に当たる。この家族写真は幸せな3人家族の記録ではなく、だまされて中国東北部へ「開拓」に来た3人の「棄民」の話を今に伝えている。

   36年、日本の軍国主義の下でいわゆる「満州農業移民百万戸移住計画」が策定され、「開拓団」を組織することで中国東北部への経済侵略を開始した。おおまかな統計によると、中国東北部へ渡った日本人農民の総数は約27万人に上り、そのうち長野県からは最多の3万7千人以上が送り込まれた。

   寺沢さんの両親も開拓団の一員だった。戦後、日本政府が出した文書のいくつかで、これらの海外に取り残された日本人を「棄民」としたことが記されている。

   寺沢さんの父は41年、母は44年に中国吉林省舒蘭市水曲柳鎮へ渡った。日本政府からの最初に指示されていた任務は「荒地の開拓」と聞いていたが、到着してみると、現地にはすでに住宅や開墾された農地があり、手つかずの無人地帯ではないと分かった。中には、元々いた中国人が追い出されるところを目撃した人さえいた。

   開拓団には旧ソ連軍に対する「人間の盾」の役割とともに、日本軍への食料供給および常に補充可能な予備兵力という主要な役割があったと分析されている。

   地図を見ると、開拓団の駐留地の多くはいずれも偽満州国北部の旧ソ連との国境近くにあった。当初「開拓団員が軍隊に召集されることはない」と言われていたが、45年に入ると18~45歳までの男性団員のほとんどが召集され、老人と病人、女性や子どもたちが残された。

   旧ソ連軍の進攻を前に開拓団を守るはずの日本の関東軍は影も形もなく、開拓団に残された多くの人が「捕虜になるのは恥」という教えに従い集団自決の道を選んだ。

   戦争で犠牲になった罪のない命には、寺沢さんの兄も含まれていた。母親はなんとか難民収容所にたどり着いたが、劣悪な環境のため、1歳の幼い命は感染症に侵され、飢えと寒さの中で失われた。

   寺沢さんの母は46年に遼寧省の葫芦島(ころとう)市から引き揚げ船に乗り日本に帰国した。父親は日本が降伏する2週間前に召集されて入隊、その後旧ソ連軍の捕虜となり、3年間のシベリア抑留を経て48年に帰国、母親と再会を果たした。

   幸運にも生き延びることができた寺沢さんの父親は帰国後、山奥でリンゴを栽培し暮らしを立てた。大切な家や土地を奪われた中国の人々のことを思うと、今になってその悲しみと悔しさを実感できると言い、「それらは全て日本が犯した過ちだった。私たちは中国に申し訳ないことをした。今はただ、本当の意味での『開拓』をしたい」と語ったという。

   寺沢さんは、満蒙開拓平和記念館の建設を最初に提案した発起人の一人だった。それまでは、満蒙開拓に関連する歴史展示施設は日本に一つもなかった。

   日本政府は当時、戦争の真実を国民に伝えていなかった、と寺沢さんは話す。父親も家族の幸せのために開拓団に加わったが、それは中国の人々を傷つけたばかりか、自分の家族にも生涯消えない悲しみをもたらしてしまった。

   寺沢さんは戦争の残酷さを理解することが平和を守るためには必要なことで、人々はたとえ政府のすることであっても、間違った行為に対しては警戒心を持つべきだと考えている。

   残念なことに日本の若い人たちは「満蒙開拓」の歴史をあまり知らない。博物館を訪れた若者の多くは、こんな歴史があったとは知らなかった、学校でも先生から教わらなかったと話す。

   寺沢さんは「これからの世代が教訓を学び、新たな憎しみを生まないためにも、この悲惨な歴史を語り続けなければならない。これからも日中両国民が交流を深め、共に尊い平和を守り続けてほしい」と語った。(記者/楊光、王子江、楊汀)

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