【新華社北京5月3日】中国の科学者がこのほど、二酸化炭素(CO2)変換の新たな手法を開発した。二酸化炭素と水を原料に電極触媒反応と生合成を組み合わせることで、ブドウ糖と脂肪酸を合成することに成功した。食糧の人工・半人工合成の新しい道筋が切り開かれた。
二酸化炭素の高付加価値化合物への変換は「廃棄物を宝に変える」ことであり、科学技術界が開発を続ける重要分野になっている。中国の科学者はこれまで、二酸化炭素からでんぷんへのデノボ合成を世界で初めて実現したが、今回の成功は二酸化炭素をほかの物質にも変換できるのかという問いに対する肯定的な答えとなった。
ブドウ糖と油脂は食糧の重要な成分。触媒反応による二酸化炭素のブドウ糖または油脂への変換に長年取り組む国内外の研究者は多いが、成功例は非常に少ない。
科学者は今回の研究で、二酸化炭素を高効率に還元して高濃度酢酸を合成し、醸造酵母で酢酸を発酵させた。研究を完成させたメンバーの1人、曾傑(そう・けつ)中国科学技術大教授は「今回のプロセスは、まず二酸化炭素を醸造酵母の『食物』である酢酸にしてから、醸造酵母にどんどん『酢を食べさせる』ことでブドウ糖と脂肪酸を合成すると説明できる」と語った。
自然界の食糧作物の生長は季節、地域、気候に左右される。今回の研究は食糧生産の人工制御を実現し、数々の外的条件の制限を打ち破った。研究を完成させたメンバーの1人、中国科学院深圳先端技術研究院の于濤(う・とう)研究員は「電極触媒反応と生合成を組み合わせ、ゼロからグラムスケールでブドウ糖を合成したことは、この方法の生産水準と潜在力の高さを示している」と述べた。
同じくメンバーの1人、夏川(か・せん)電子科技大教授は「将来的にはでんぷんの合成や色素、薬物の生産も、電極触媒反応用装置を変えずに発酵に使用する微生物を変えるだけで可能になる」と説明。一方で、研究成果から実用化への道のりは長く、関連技術の全面的な進歩と持続的なコスト低減が必要になるとも述べ、今後は電極触媒反応と生物発酵という二つの働きの相関性と互換性をさらに研究していく考えを示した。
上海交通大学微生物代謝国家重点実験室で主任を務める鄧子新(とう・ししん)院士(アカデミー会員)は今回の研究について、電気化学と生細胞を組み合わせてブドウ糖などの食糧産物を合成する新たな方法を切り開いたと説明。電力主導による新型農業とバイオ製造業の発展に新たな手本を示す二酸化炭素利用の重要な方向性だと語った。
研究成果は4月28日、国際的学術誌「ネイチャー・キャタリシス」に巻頭論文として掲載された。
当社のコンテンツは著作権法によって保護されます。無断転用、複製、掲載、転載、営利目的の引用は禁じます。