【新華社長春10月17日】中国吉林省長白山保護開発区で11日、中国科学院上海天文台が主導する口径40メートルの電波望遠鏡の設置工事が始まった。同望遠鏡は中国の月・深宇宙探査プロジェクトにおいて、遠く離れた場所にある複数の電波望遠鏡を組み合わせて観測する「長基線電波干渉法(VLBI)」という技術を用いた軌道決定観測を担い、中国の既存VLBIネットワークの配置と観測能力を高める見通し。
VLBIは電波天文分野の干渉測量技術を起源とする技術で、ネットワーク内の複数の望遠鏡で口径が大きい一つの望遠鏡を構成する。望遠鏡間の基線が長いほど、形成する「仮想的な口径」は大きくなり、共同観測の精度と空間分解能も高くなる仕組み。
上海天文台の沈志強(しん・しきょう)台長は、VLBI技術を使用すれば、宇宙船の測地や軌道決定観測をリアルタイムで正確に行うことができると指摘。中国は初の月周回衛星「嫦娥1号」の打ち上げ以降、一連の月・深宇宙探査で距離・速度測定とVLBIを組み合わせた新型軌道決定観測方法を採用し、順調にプロジェクトを遂行してきた。
中国の既存のVLBIネットワークは北京市、新疆ウイグル自治区ウルムチ市、雲南省昆明市、上海市にある観測所4カ所と、上海VLBIデータ処理センターで構成され、世界トップレベルの観測能力を誇る。長白山電波望遠鏡と9月に着工した西蔵自治区日喀則(シガツェ)の電波望遠鏡(口径40メートル)は同ネットワークをさらに充実させる見通し。
上海天文台長白山観測所の李斌(り・ひん)チーフエンジニアは、「シガツェと長白山の望遠鏡が設置されると、中国VLBIネットワークの基線は最長で約3200キロから3800キロに伸び、角分解能が最大18%向上する」と紹介。「長白山の望遠鏡は上海の天馬望遠鏡より東に位置しており、より早く宇宙目標を捕捉できる」と語った。長白山望遠鏡の設置後、中国は「観測所6カ所、データ処理センター1カ所」からなるVLBIネットワークを構築し、2つの探査機に対し、正確な観測を同時に行うことができ、月・深宇宙探査プロジェクトの実施を効果的に支えることになる。(記者/張泉、張建)