5日、ルーマニアのブカレスト北駅で、ウクライナの人々を手助けする地元ボランティア(左端と右端)。(ブカレスト=新華社配信)
【新華社北京3月11日】国際情勢が複雑かつ不安定な中、中国でこのほど開かれた「両会(全国人民代表大会と中国人民政治協商会議)」の外交部長記者会見は、国内外の世論の注目を集めた。中国外交学院の王帆(おう・はん)副院長は、新華社傘下のネットメディア「新華網(しんかもう)」の取材に対し、今回の記者会見が発した重要なシグナルについて解説した。
王氏は、米国こそロシア・ウクライナ危機を作り出した張本人だとする同氏の考えについて記者から具体的な説明を求められ、米国が今回の危機で得る地政学的、政治的、経済的利益について次のように述べた。
米国の戦略はグローバル覇権戦略と呼ばれている。米国は実際に冷戦終結の直後から、覇権をいかにして持続させるか、永続的覇権にするかを考えてきた。米国はその時点で、十分かつ有利な機会を得たと考えていた。つまり、旧ソ連という敵がなくなり、米国が唯一の世界の覇者となったのだと。当時、米国の多くのメディアや専門家は、世界が「一極世界」に入ったとし、そのようなモデルを21世紀まで持ち込むべく議論していた。
グローバル覇権の重要な特徴は、地域の安定や地域の連帯と協力に基づくのではなく、往々にして地域間の分裂、地域や国同士のけん制に基づく点にある。米国はそこからより有利ないわゆる「オフショアバランサー」の地位を得ることができていた。
冷戦終結後から現在に至るまで、米国が進めてきたのはそうした戦略だった。東アジアでは、米国は中国と日本の間の矛盾が深まるようあおり続けてきた。日本が中国と協力する一面を出そうとすると、米国は日本に圧力をかける。米国のこの地域での狙いが、これらの国々の相互けん制による均衡、さらには消耗にあるのがよく分かる。
欧州では現在、米国がなぜロシアの軍事行動につながるような現状を作り出したのかを多くの人が議論している。実際は北大西洋条約機構(NATO)の5回にわたる東方拡大が原因なのだが、ではNATOの東方拡大の目的は何か。ロシアから見れば、ロシアは西方に拡大しておらず、他の欧州諸国に直接の脅威を与えてもいない。これは米国も認めている。ではなぜ東方拡大を続けなくてはならなかったのか。それには非常に複雑な背景があるが、一つにNATOの結束力を高めることが挙げられる。NATOは冷戦後も存在し続ける必要があったのか。NATOは新たなライバルとしてロシアに照準を定めた。NATOはロシア脅威論により東方拡大を続けることができた。欧州内でロシアに対する警戒感と敵意は高まったが、ロシアは反発を強め、ロシアと欧州間に現在のような対立と矛盾が形成された。米国の目的は、欧州が一つにならないよう分裂させることにある。当時はロシアもNATO加盟の意向を示したが、結局拒否された。ここからも、米国の戦略的意図をはっきり見ることができる。
現在のロシアとウクライナの衝突には、ロシアを弱体化させ、米国にとって大きな懸念材料や長期的脅威とならないようにするという側面がある。加えて周知の通り、米連邦議員が話したことだが、衝突が起こり、戦火が上がりさえすれば、米国の軍需産業は各種の軍事支援や武器供与、武器実験など、そこから多くの利益を得ることができる。
さらに、ロシアとウクライナ間の天然ガスを巡る争いを逆転させる側面もある。両国はずっとこの問題で争ってきたが、ロシアは欧州にとって最も重要な天然ガスと石油の供給国の一つであり、ドイツは石油の半分以上をロシアから調達していた。ロシアとウクライナの対立が激化する以前、ドイツとフランスはまだ態度を決めかねていたが、今は明らかに変化が生じ、対ロ制裁に参加し始めた。この種の制裁は、実のところ米国が最も望んでいたものだ。欧州のこうした混乱が株式市場に与える影響や、投資に与える影響、これらの資金や資本が米国に流れるであろうことも含め、一連の事象は全て、米国にとって危機からの収穫であり、危機によって得られる利益となる。
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