
16日、フウの木にまつわる歴史を解説する重慶市綦江区安穏鎮羊角村の楊雲林党支部書記。1935年1月、長征の途上にあった紅軍第1軍団第1師第2団がこの木の下で休息を取ったという。 (重慶=新華社記者/周思宇)
【新華社重慶10月30日】中国共産党が組織した中国工農紅軍の第1軍団第1師第2団が1935年1月15日、長征の途上で現在の重慶市綦江(きこう)区安穏鎮に当たる羊角郷に入った。紅軍についてのうわさを信じて恐れた多くの村人は、到着前に山へ逃げ込んでいた。
厳しい寒さの中、出産したばかりの劉維珍(りゅう・いちん)さんは、一人で家に残り、寒さと空腹、不安に耐えていた。そこへ数人の紅軍兵士が訪れ、古い軍服や雨具を差し出し、温かい羊肉スープを振る舞った。
その後、紅軍兵士たちの規律正しい行動や住民への思いやりに接し、村人たちは次第に警戒を解いた。山から家に戻り、自ら進んで紅軍に協力するようになった。劉さんに振る舞われた1杯の羊肉スープは、紅軍と住民の間に生まれた信頼と絆を象徴する物語として、90年以上にわたり語り継がれてきた。

16日、ヤギ小屋で餌を補充する重慶市綦江区安穏鎮羊角村の陳飛さん。(重慶=新華社記者/周思宇)
安穏鎮では近年、基層幹部らによる長征の歴史を伝える活動を奨励してきた。長征の精神を次世代に伝える取り組みは、地元の若者へと受け継がれている。
ミャオ族の楊雲林(よう・うんりん)さんは2021年に大学を卒業後、安穏鎮羊角村に戻り、革命の歴史の解説員となった。5年間で累計600回以上の解説活動を行い、その働きが認められて村の党支部書記に選ばれた。「村の人たちの暮らしを豊かにすることこそ、長征の精神を受け継ぐことにつながる」と話す。
羊角村ではここ2年、農家の収入を増やすための取り組みが進められている。村民の陳飛(ちん・ひ)さんは政府の支援を受けてヤギを飼育し、毎年2万~3万元(1元=約24円)の安定した収入を得ている。
楊さんは今後、村のインフラ整備をさらに進めるとともに、長征の歴史を学ぶ体験プログラムや観光事業の充実を図る考えだ。90年以上前、村人に差し出された1杯のスープ。その物語を地域の新たな活力につなげ、より多くの村民の暮らしを豊かにしたいとしている。(記者/周思宇)