20日、花江峡谷大橋でジャンプの準備をする久保杏夏さん(左端)と南宏樹さん(左から2人目)。(貴陽=新華社配信)
【新華社貴陽10月28日】中国貴州省の花江峡谷大橋のジャンプ台に、装備を背負った日本のベースジャンパー、久保杏夏さんと恋人の南宏樹さんが並んで立った。足元には、花江大峡谷の奥に広がる山の稜線(りょうせん)と川がはっきりと見える。
準備を整えた2人は、そよ風を受けながら同時に宙へ飛び出した。峡谷の間にパラシュートが開き、風に乗って向きを変える。橋の上で見守る観光客は息をのみ、2人が着地エリアに無事降り立つと、ようやく緊張を解いた。
久保さんが南さんを伴って中国を訪れ、橋からのベースジャンプに挑むのはこれが初めてで、場所は昨年父親と共に飛んだ花江峡谷大橋だった。

20日、花江峡谷大橋でジャンプ台に立つ南宏樹さん(右から2人目)と久保杏夏さん(右から3人目)。(貴陽=新華社配信)
2人は同省で17~23日に開かれた高橋ベースジャンプ国際招待大会に参加した。会場は同省安順市関嶺プイ族ミャオ族自治県の壩陵河大橋と、黔西南(けんせいなん)プイ族ミャオ族自治州貞豊県の花江峡谷大橋の2カ所で、19カ国から30人余りの選手が集まった。
壩陵河大峡谷にかかる壩陵河大橋は、水面から橋面までの高さが370メートル。花江峡谷大橋は花江大峡谷にかかる全長2890メートルの橋で、水面からの高さは625メートルで世界一、主径間は1420メートルで山岳地のつり橋として世界最長となっている。
2人の今回の旅は、貴州省で高い橋の建設が急速に進む時期と重なった。

23日、花江峡谷大橋の下の着地点で、装備を片付ける久保杏夏さん(左)と南宏樹さん。(貴陽=新華社配信)
ベースジャンプとウイングスーツフライトの選手である久保さんと南さんは、恋人であると同時に、長年行動を共にする競技仲間でもある。久保さんは日本で唯一の女性ウイングスーツフライト・ベースジャンプ選手で、父親は40年以上ベースジャンプに携わり、日本でテレビ番組に出演したこともある。久保さん自身も父親の影響で4、5年前にこの競技を始めた。
南さんもまた、久保さんの父親の影響を受けた一人だ。高校時代にテレビで久保さんの父親が飛ぶ姿を見て心を動かされ、自ら連絡を取って師事し、競技歴は約8年になる。その後、南さんは久保さんと競技仲間にも恋人にもなり、各国を旅して訓練や大会に臨んでいる。
2人は17~18日に壩陵河大橋で一連のジャンプを終え、花江峡谷大橋に移動した。久保さんは「こうした信じられないような橋を間近に見るたび、工事の精巧さを実感する」と語る。

23日、花江峡谷大橋の着地エリアに降り立ち、記念写真に納まる久保杏夏さん。(貴陽=新華社配信)
久保さんにとって今回の貴州訪問には、忘れられない個人的な思い出が加わった。昨年は初めて父と飛び、今年は初めて恋人を連れてきた。同じジャンプ地点でも、隣にいる人が変われば感じ方も違う。昨年が父娘の継承と寄り添いなら、今回は恋人同士の共有と並走だったという。
久保さんは「この地の山や峡谷、橋の規模に圧倒される」と話し、中国には現代的な大都市やハイテクがある一方、広大で静かな山地もあり、両者が共存している点が印象深いと語った。
さらに「今後は中国のもっと多くの山で飛び、さまざまな場所を旅したい。現地のベースジャンパーとも知り合い、交流を深め、中国における競技の発展状況を理解したい」と述べた。(記者/羅羽)