元レスリング王者が故郷で馬場開設、遊牧文化を復活 中国四川省

元レスリング王者が故郷で馬場開設、遊牧文化を復活 中国四川省

新華社 | 2026-10-21 17:39:15

観光客を連れて乗馬体験を行う仁青旺嘉さん(左から2人目)。(2025年7月17日撮影、成都=新華社配信)

 【新華社成都10月21日】中国四川省アバ・チベット族チャン族自治州紅原県で、かつてレスリングの王者だった仁青旺嘉(レンチンワンジア)さん(34)の開設した馬場が、ビジネスとして成功を収めている。モータリゼーションの進展で日常の移動手段としては役割を終えた馬を、伝統文化の体験ビジネスとして復活させた。

 仁青旺嘉さんは7年前、わずか馬2頭とともに起業した。現在、馬場では44頭を飼育している。ハイシーズンには毎日10人以上の観光客を連れ、馬に乗って丘を越え、川を渡り、草原や山の奥深くに入る。「お客に草原を見てもらい、遊牧文化を体験してもらうことが目的だ」と語る。

 同自治州の牧畜民の家庭に生まれた仁青旺嘉さんは、幼い頃から毎日のように馬に乗って育った。優れた身体能力を買われてレスリングの育成選手に選ばれ、13歳の時に初めての遠征で県外へ出た。

 その後も活躍の場を広げ、成都市でのトレーニングや試合を経て、四川省の大会で何度も優勝。全国大会でも王座に輝いた。

 現役引退後は北京へ拠点を移し、幼少期から最も親しんでいた乗馬を改めて学び直した。

四川省アバ・チベット族チャン族自治州紅原県を通る久治-馬爾康高速道路。(9月4日、ドローンから、成都=新華社記者/王曦)

 4年間にわたり現代馬術を体系的に学び、中国とフランスそれぞれの馬術協会から騎手や指導員の資格を取得した。仁青旺嘉さんは「現代馬術を学んだことによって、馬について改めて深く知ることができた」と振り返る。

 幼い頃から慣れ親しんだ遊牧文化と都市で学んだ現代馬術を融合させたいと、2019年に故郷の紅原県に戻った。

 平均標高が3600メートル以上の同県は、「中国チベット族馬術の里」と称されている。伝統的な馬の産地の一つで、現在、県内の飼育頭数は約2万頭に上る。バイクや自動車が普及したことで、馬は牧畜民の日常的な移動手段としては役割を終えたが、競馬や草原観光、文化体験において新たな存在感を示している。

 仁青旺嘉さんは当初、観光客の比較的多い月亮湾風景区で乗馬体験を提供していたが、道路沿いを1周するだけでは草原の真の魅力を知ってもらうことは難しいと感じていた。そこで馬場を開設し、1時間程度の乗馬体験を、数時間から終日に及ぶ「草原トレッキング」へと拡充していった。

四川省アバ・チベット族チャン族自治州紅原県の日干喬湿地に建つ、中国工農紅軍による「長征」を記念したモニュメント。(8月13日、ドローンから、成都=新華社記者/王曦)

 数日間滞在し、毎日異なる馬に乗り換えて多様なルートを散策する観光客もいる。数年を経て、馬場には国内外のリピーター数千人が訪れるようになった。中国で乗馬は、一部の限られたエリート層のスポーツから、都市の喧噪を離れてリフレッシュするための手段へと変化しつつある。

 同県はここ数年、乗馬体験スポット100カ所以上の整備や刷新を進め、馬の繁殖、飼育、即売、観光体験の産業化を推進。馬術大会や音楽フェスティバルなどのイベントを通じて観光客を誘致している。25年の各種大会期間中、同県を訪問した観光客は延べ22万人、観光収入は2億1850万元(1元=約24円)に上った。

 仁青旺嘉さんは現在、自らショート動画を作成し、草原での乗馬の様子をネット上に投稿して観光客を呼び込んでいる。ハイシーズンに手が回らなくなると、地元の牧畜民を育成し、臨時インストラクターとして雇用する。25年の馬場の利益は約60万元に達した。(記者/程露、白旭、呉光于)

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