7月31日、自宅で資料に目を通すシンガポールの歴史学者、林少彬氏。(シンガポール=新華社配信/鄧智煒)
【新華社シンガポール8月15日】旧日本軍による東南アジア侵略などを長年研究しているシンガポールの歴史学者、林少彬(リム・シャオビン)氏はこのほど、新華社の取材に対し、旧日本軍の細菌戦部隊として知られる731部隊の研究には今も大きな空白が残っており、より多くの国や分野の研究者が連携し、史料のさらなる公開を進める必要があるとの考えを示した。
林氏は1980年代から、第2次世界大戦期の日本側史料を収集してきた。この10年は主に、731部隊が東南アジアに置いた「岡9420部隊」を研究している。
林氏によると、9420部隊はシンガポールとマレーシアに細菌兵器の大量生産体制を構築していた。ネズミの餌となる野菜の栽培から、ネズミの飼育、ノミの繁殖、ノミにペスト菌を保有させる作業までを行い、最終的にペスト菌を持つノミをガラス製の弾に詰めて前線へ送っていたという。
こうした研究成果は、林氏が中国人研究者の王選(おう・せん)氏と共同執筆し、昨年出版した「日軍岡字第九四二〇部隊」で紹介されている。その後も関連する新たな資料が相次いで見つかっている。
その一つが、英国立公文書館に保管されている元捕虜の回想資料で、日本軍が英国人捕虜に対しても人体実験を行っていた可能性を示す新たな手掛かりとなっている。
ウィリアムズという元捕虜は、1942年2月にシンガポールで捕虜となった後、多くの捕虜と共にワクチン接種や注射を受け、採血されたほか、肛門からガラス管を挿入されたと記している。その4~5日後には、本人を含む多数の捕虜に激しい頭痛や下痢、赤痢、腹部の不調などの症状が現れたという。
7月31日、自宅で新華社のインタビューに応じるシンガポールの歴史学者、林少彬氏。(シンガポール=新華社配信/鄧智煒)
林氏は著書でも、9420部隊が英国人を対象に人体実験を行った可能性を指摘していた。44年6月にはシンガポールで、当時現地では風土病でなかったツツガムシ病に英国人捕虜17人が感染し、3人が死亡した。林氏は「この感染症は現地にあったものではなく、人為的に持ち込まれた」と指摘した。
林氏はまた、日本の降伏後、米国が731部隊を調査するため複数の調査団を派遣したことに言及した。731部隊から米国側には約8千枚の病理標本のスライドが引き渡されたとされるが、米国側はこれを公表せず、その後も部隊関係者の戦争責任が追及されることはなかったと述べた。
林氏は「国際協力は極めて重要だ」と強調。各国が協力し、日本や米国などに対してさらなる史料公開を促す必要があると語った。
また、日本の近代侵略史を振り返ると、戦争準備や軍事拡張は実際の戦争が始まる何年も前から進められていたと指摘。同様の悲劇を繰り返さないため、国際社会は警戒を保ち、敗戦国に対するより実効性のある監督の仕組みを構築する必要があるとの考えを示した。