「商品を売る」から「体験を売る」へ 中国の旗艦店が示す新しい消費の形

「商品を売る」から「体験を売る」へ 中国の旗艦店が示す新しい消費の形

新華社 | 2026-07-15 17:25:32

鄭州にある「蜜雪冰城」本部旗艦店で商品を選ぶ来店客。(6月18日撮影、鄭州=新華社記者/楊金鑫)

 【新華社鄭州7月15日】博物館のような空間演出のドリンク店、汝窯(じょよう=北宋時代の磁器窯)青磁を模した店構えの携帯電話ショップ、街の観光スポットと化した茶飲料店…。中国ではさまざまなブランドの旗艦店が、単なる小売店舗から、都市の新たな消費のランドマークへと変貌を遂げつつある。

 河南省鄭州市の鄭州東駅東広場を出て目を上げると、すぐに巨大な「雪王」の像が視界に入り、その横には長蛇の列ができているのが見える。

 山東省済南市から来た観光客の王暁囡(おう・ぎょうなん)さんは「しっかり下調べをしてきたので、高速鉄道駅を出てすぐこの店に直行できた」という。王さんは、河南旅行の最初の目的地としてこの飲料ブランドの本部旗艦店を選んだ。店内は人であふれ、王さんの予想を上回る熱気だった。限定フレーバーのアイスクリームや、ずっと欲しかった冷蔵庫用マグネットに加え、ブラインドボックスやブロック玩具もたっぷり買い込んだ王さんは、「種類も豊富で値段も手頃。スーツケースを持って来れば友達用にもっとたくさん買えたのにと後悔している」と語った。

 ここでは、交流サイト(SNS)用の記念写真撮影、社交・レジャーが買い物と同じくらい重要視されている。ブラインドボックス、冷蔵庫用マグネット、ぬいぐるみなど、多彩な品ぞろえの文化クリエーティブ製品が消費者に「情緒的価値」を提供し、単なる取引の場を多元的な体験空間に変えている。スタッフの李冬雪(り・とうせつ)さんによると、6月19~21日の端午節連休の3日間に、同店の来客数は延べ15万人に達した。

 現在、中国のサービス業の規模は着実に拡大しており、生活サービスに対する住民のニーズはますます高まっている。消費の重点は「より多くの商品を買う」ことから「より良いサービスと体験を得る」ことへと急速にシフトしている。多くの旗艦店が、きめ細やかでパーソナライズされたサービスにより、消費の潜在力を引き出している。

鄭州市にある茶飲料ブランドの旗艦店内に設置された「シルクロード回廊」の空間演出。(6月18日撮影、鄭州=新華社記者/楊金鑫)

 鄭州の大型ショッピングモール「鄭東万象城」に入っている携帯電話ブランドの旗艦店では、汝窯文化に着想を得たデザインと若者に人気のトレンドカルチャーを結び付け、従来型店舗の小売り機能の枠組みを超越しようとしている。

 ガラス扉を開けると、河南省の要素がふんだんに盛り込まれたテーマウォールが目に飛び込んでくる。河南省名物料理の燴麺、鄭州市にある放送塔の中原福塔、方言文字などの要素を取り入れたこの店は、ショッピングモール内でも人気の写真撮影スポットとなっている。

 ますます多くの旗艦店が文化を通じて消費者と対話するようになるにつれ、店は期せずして「地元の人々が誇りに思い、他地域の人々が憧れる」新たな消費空間となっている。

 鄭州市金水区にある茶飲料系の旗艦店に足を踏み入れると、香辛料の香りがラクダの鈴の音と共に来店者の五感に染み込んでくる。河南博物院所蔵の文化財「絵彩勾首馬(かいさいこうしゅば)」をモチーフにしたアートインスタレーションが店の入り口に静かにたたずみ、「百家姓」「拴馬樁(馬をつなぐ石柱)」「シルクロード回廊」などの空間演出が、店を小さな文化展示ホールに変えている。

 北京市から訪れた2000年代生まれの張さんは、「河南ならではの特色を目当てに来た」という。張さんと友人は、「要チェック」リストを手に来店。2人は、生薬として用いられるシソ科植物「荊芥(ケイガイ)」入りのドリンクや胡辣湯(フーラータン、河南省名物のスパイシーなスープ)風味のフライドポテトを入手、SNSに投稿して高評価をもらい、次の目的地へと向かった。

鄭州市にある携帯電話ブランドの旗艦店内に設けられた、河南省の要素をちりばめたテーマウォール。(6月18日撮影、鄭州=新華社記者/楊金鑫)

 同茶飲料ブランドの河南地区マネージャーの張亜瓊(ちょう・あけい)さんは、「今年5月、この店の売上高は前年同期比で約15%増加した。旗艦店は、機能的価値を提供する場から情緒的価値を提供する場に変貌しつつある。ここを訪れた消費者は、商品だけでなく体験や文化的な帰属感も持ち帰る」と述べた。張さんによると、河南省には深く厚い文化的蓄積があり、同社は商品以外にも空間を通じて中原(黄河中・下流域)の文化や風物に関する物語を伝え、消費者にはお茶を飲みながら、中原文化と香辛料文明に触れるひとときを過ごしてもらいたいと考えているという。

 商品売り場から都市のレジャースポットへ。ブランドの旗艦店はもはや単なる販売現場ではなく、ブランドと消費者が深い関係を築く「第三の空間」になりつつある。

 旗艦店がますます魅力的な場所となっている背景には、住民の消費ニーズの転換と高度化がある。必需品の購入から、情緒的価値、文化体験、社交的要素の総合的な充足へと、旗艦店の進化は続いている。(記者/劉振坤、楊金鑫)

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