
甘粛省定西市渭源県の秦代長城で、長城本体の観測データを収集する中国科学院西北生態環境資源研究院の賈栄亮(か・えいりょう)研究員。(2024年11月28日撮影、蘭州=新華社配信)
【新華社蘭州7月8日】中国では、土を突き固める「版築工法」で築かれた万里の長城の風化防止が文化財保護分野の長年の懸念だったが、今ではバイオクラストと呼ばれる天然の生態層による城壁補強効果の有効性が確認されている。
甘粛省の敦煌研究院や中国科学院西北生態環境資源研究院などが長年にわたる野外調査、比較実験、分析を経て実証し、長城を科学的に保護する重要なよりどころとなった。
バイオクラストとは、藍藻(らんそう)や地衣(ちい)類、蘚(せん)類などの微小生物と土壌粒子が結合して形成された地表の複合体を指す。中国科学院西北研究院の段育竜(だん・いくりゅう)副研究員によると、バイオクラストは自己維持・修復能力を持ち、版築建造物との親和性も高く、防風や土壌の固定、浸食の抑制、城壁の安定維持などに効果を発揮する。

甘粛省定西市通渭県の秦代長城で、バイオクラストのテストを行う中国科学院西北生態環境資源研究院の賈栄亮研究員(右)。(2025年9月18日撮影、蘭州=新華社配信)
研究チームは、バイオクラストが建造物の表面では雨水の衝撃を和らげ、構造に対しては水の浸透を防ぎつつ空気を通し、内部に対しては糸状の藍藻や菌糸、蘚類の仮根が網状に絡み合って土をしっかりと結び付ける働きをすることを発見。版築の圧力耐性、断裂耐久性、耐浸食性能を大きく高めることを確認した。
バイオクラストが自然条件下で定着に数年から数十年かかるという問題については、人工培養と接種技術を用いた研究を進め「人工クラスト繁殖・接種技術」システムの構築に取り組んでいる。

甘粛省定西市渭源県の秦代長城で、バイオクラストのサンプルを採取する中国科学院西北生態環境資源研究院の段育竜(だん・いくりゅう)副研究員。(2025年10月21日撮影、蘭州=新華社配信)
ただ、バイオクラストも欠点がないわけでなく、半湿潤・湿潤地域では過度に湿った環境が植物の旺盛な生育や根による構造物の破壊を引き起こす可能性があり、アリやミミズなどを呼び込み、構造物にさらなる損傷をもたらす恐れもあるという。
中国科学院西北研究院の賈栄亮(か・えいりょう)研究員は「長期的なモニタリング体制の構築を計画している。バイオクラストの変化を追跡し、保護機能が破壊機能に変わってしまう『臨界点』を正確に捉えていく」と語った。(記者/張文静、呼涛、文静)

甘粛省金昌市永昌県の明代長城で、赤外線サーモグラフィーを用いてバイオクラストを撮影する敦煌研究院の武発思(ぶ・はつし)研究館員。(2025年10月25日撮影、蘭州=新華社配信)