
16日、地下鉄の通路で本を販売する林宝山さん。(広州=新華社配信/史為鑒)
【新華社広州6月29日】中国広東省広州市の街頭は、夜明けとともに人通りが増え始める。行き交う人混みの中で林宝山(りん・ほうざん)さん(92)はスーツケースを引きながら、慣れた様子で場所を確保すると、翻訳書を1冊ずつきれいに並べ出した。ここは、林さんが20年以上守り続けてきた露店営業の本屋だ。

サインとメッセージを添える林宝山さん。(6月9日撮影、広州=新華社配信/魏暁航)
林さんは若い頃、基層医療機関に勤めていた。在職中は臨床経験を生かして数多くの医学論文を執筆、その多くは専門誌に掲載された。同じく医療に知見のある妻と共に普及啓発用の医学書を執筆するなど、一般の人々に向けて健康に関する知識を広めてきた。
林さんは「退職後は病気になった妻のそばにいてあげたいと思い、外国語の翻訳を始めた」と振り返る。当時、文字は妻に寄り添う温かい絆となっていたという。妻が他界した後、林さんは書きためてきた翻訳をまとめ、初の翻訳書を出版した。2004年、70歳になった林さんは街頭で自書の販売を決意した。林さんはその後も長年筆を執り続け、19カ国の36作品を収録した翻訳書や、自身の医療現場での経験をもとに執筆した文学作品など、数多くの作品を発表してきた。

16日、林宝山さんが販売する翻訳書。(广州=新華社配信/史為鑒)
初めて自分の作品を購入してくれた読者が現れた時、林さんは感動のあまりメッセージを書き添えた。以来20年以上にわたって、読者にメッセージを添えることが習慣となり、読書好きの仲間ともたくさん知り合うようになった。作品を読み終えた後に感想を寄せてくれる読者も多い。深圳で働く山西省出身のある読者は、林さんの作品を全て集め、頻繁に長い感想を送ってくれるという。本を通じて2人の間に深い友情が育まれた。
長年にわたり貫いてきた初心について林さんは「より多くの人に作品を読んでもらいたいという思いから、創作や翻訳に打ち込んできた」と明かし、読者との交流のおかげで老後の生活が大変充実していると率直に語った。

16日、地下鉄の通路で本を販売する林宝山さん(左端)。(広州=新華社配信/史為鑒)
広州市ではここ数年、都市インフラの整備が進んでいる。道路の補修・拡幅工事が行われ、65歳以上の高齢者がバスや地下鉄を無料で利用できる制度も導入されたほか、バリアフリー施設も普及している。林さんは「今は道も歩きやすくなり、乗り物も便利になり、露店も気楽に出せるようになった」と感慨深そうに語る。林さんの物語は、同市が高齢者に優しい社会を構築している様子を如実に映し出している。生活環境が改善されるにつれ、多くの高齢者が安心して好きなことに打ち込み、心豊かに老後を過ごせるようになっている。(陳凱昊、魏暁航)

林宝山さんがまとめ、出版した最初の医学書。(6月9日撮影、広州=新華社配信/魏暁航)

取材に応じる林宝山さん。(6月9日撮影、広州=新華社配信/史為鑒)