中国でエンボディドAI実用化進む 天津の博覧会で最新技術展示

中国でエンボディドAI実用化進む 天津の博覧会で最新技術展示

新華社 | 2026-06-04 16:51:30

5月28日、2026世界スマート産業博で、針の糸通しを実演するロボット。(天津=新華社記者/孫凡越)

 【新華社天津6月4日】中国で、身体性を持つ人工知能「エンボディドAI」の実用化が加速している。ロボットが周囲の環境を認識し、身体を通じて動作を学ぶ技術で、製造業や物流、医療、都市管理など幅広い分野で応用が進みつつある。

 天津市でこのほど開かれた「2026世界スマート産業博覧会」では、展示面積1700平方メートルの「ロボットタウン」が設けられた。会場には工業生産、ホームサービス、スマート医療、都市管理などに対応するロボットが並び、人間と機械が共に働く場面が現実のものになりつつあることを印象づけた。

5月30日、2026世界スマート産業博で、宇樹科技(ユニツリー・ロボティクス)の人型ロボットによるダンスを楽しむ来場者ら。(天津=新華社記者/孫凡越)

 天津を拠点とするロボットメーカー、伽利略技術(ガリレオ)のブースでは、ロボット犬が階段の上り下りやほふく前進、登坂といった複雑な動作をこなしていた。急な坂道では無理に進まず、より安定した登り方を自ら計算し、姿勢を保ちながら登っていく。

 こうした動作を支えるのが、同社が独自開発した関節モジュールと歩行制御技術だ。研究開発チームはモーターや減速機、エンコーダーなどを統合した一体型の関節モジュールを開発。アルゴリズムチームは歩行制御を継続的に改良し、ロボット犬が地形を認識するだけでなく、各関節にかかる負荷を基に動作をリアルタイムで修正できるようにした。

 天津大学エンボディドAI研究院の孫濤(そん・とう)院長は「中国ではエンボディドAIが戦略的未来産業の重点分野として位置付けられている。センサーや減速機、モーターなどの川上から、システム統合や応用などの川下まで、サプライチェーンの整備が進み、産業の急速な発展を支えている」と語る。

5月30日、2026世界スマート産業博で、伽利略技術(ガリレオ)のロボット犬を見る来場者ら。(天津=新華社記者/孫凡越)

 ハードウエアを支える製造業の基盤に加え、データとソフトウエアの蓄積も実用化を後押ししている。触覚センサーの開発を手掛ける帕西尼感知科技(PaXini Tech)のブースでは、器用な手を備えた人型ロボットが物流作業を想定した実演で、物をつかむ、仕分けるといった複雑な動作を素早くこなしていた。その背景には、現実の作業を通じて収集した大量の訓練データがある。

 同社は中国に五つの大型データ収集拠点を設けている。天津のデータ収集現場では、スタッフが自社開発の5本指触覚収集グローブを装着し、自動車製造、医療、スーパーなど15分野で、把持、組み立て、仕分けといった実作業を行っている。センサーが記録した接触時の力、関節の角度、視覚情報などの「経験」は、ロボットの訓練に使えるデータへと変換される。

 今年4月には、こうしたデータを製品化し、クラウド上のデータ販売サービスで提供を始めた。企業はデータ収集の仕組みをゼロから構築しなくても、工業用原材料を調達するように、標準化された訓練データを購入できるという。

5月28日、2026世界スマート産業博で、物流現場での仕分け作業を実演する帕西尼感知科技(PaXini Tech)の人型ロボット。(天津=新華社記者/孫凡越)

 エンボディドAIの発展を後押しするもう一つの動きが、オープンソースや共有型インフラの拡大だ。今年3月には、アリババグループ傘下の高徳が、ロボット操作向けの基盤モデル「ABot-M0」を全面的にオープンソース化すると発表した。さまざまな形態のロボットに対応し、異なる作業環境で共通して使える動作制御能力の実現を目指す。

 5月には浙江省杭州市で、国家AI応用中間試験基地(エンボディドAI)が発足した。企業はリース契約を通じて、計算資源やデータ、AIモデル関連サービス、実用場面を想定した検証環境などを利用できる。

5月28日、2026世界スマート産業博で、楽器演奏を披露するロボット。(天津=新華社記者/孫凡越)

 天津市にある南開大学人工知能学院の呉慶祥(ご・けいしょう)副教授は「中国のAI産業はオープンで共創的なエコシステムの構築を進めている。これによりイノベーションへの参入障壁や業界内での重複開発コストが下がり、革新の活力が大きく引き出されている」と話す。

 国際協力が深まる中、中国のエンボディドAI産業で蓄積された技術成果は世界へと広がっていくとみられる。呉氏は「将来的に中国企業は、コストパフォーマンスに優れた高品質なソフト・ハード一体型ソリューションを世界市場に提供するだけでなく、国際的な協調によって、エンボディドAI産業のさらなる発展を共に後押しすることになるだろう」と語った。(記者/蔣文茜、宋瑞、馬博文)

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