
裴李崗遺跡出土の後期旧石器時代の遺物。(新鄭=新華社配信)
【新華社鄭州5月22日】中国河南省新鄭市の裴李崗(はいりこう)遺跡が、2025年度の全国十大考古新発見に選出された。中国の重要な新石器時代文化「裴李崗文化」の由来となった遺跡で、8千年前の中原地区の農耕文明を理解する重要な手がかりをもたらした。
遺跡からは、現時点で中国最古となる紅焼土(土を焼き固めた建築資材)を用いた住居遺構が見つかった。発掘プロジェクトの責任者、中国社会科学院考古研究所の李永強(り・えいきょう)副研究員は「裴李崗の先人の定住生活に対する理解が深まっただけでなく、仰韶(ぎょうしょう)時期(裴李崗文化の後に出現する新石器時代文化)の紅焼土建築の起源を研究する上での重要な手掛かりになった」と語った。
北方地区で米を原料とした紅麹(べにこうじ)菌で酒を醸造していたことを示す最も古い証拠も見つかった。遺跡の墓域から出土した複数の陶壺の残留物の研究で、紅麹の菌糸や閉子囊殻(へいしのうかく=胞子を内部に閉じ込めた球形の保護器官)、発酵特性を持つ米のでんぷん粒が確認された。

保護ドームで覆われた裴李崗遺跡の発掘現場。(新鄭=新華社記者/袁月明)
中原地区で最古となる人面獠牙像(じんめんりょうがぞう=牙を生やした人面像)も出土した。鄭州市文物局の顧万発(こ・ばんはつ)局長は「特に『介』字形の冠をかぶった人面獠牙陶塑(土器像)は、先史時代の神人像の起源を探る上で重要な資料になる」と説明。介字形冠は先史時代の太陽神崇拝と関係している可能性があり、裴李崗の人々が一定の宇宙観を持っていたことを示しているとの見方を示した。
比較的複雑な繊維加工や染色技術が存在していたことも分かり、先史時代の紡織活動や分業制に対する認識を塗り替えた。
李氏は「一連の研究成果は、裴李崗の人々の暮らしがこれまで考えられていたような原始的かつ未開なものではなく、中華文明の夜明けの光が既に差し込んでいたことを示している」と述べた。

裴李崗遺跡出土の人面獠牙陶塑。(新鄭=新華社配信)
遺跡の考古学標本室に入ると、ありきたりに見える小石が陳列ケースに並んでいた。「ただの石ではない。後期旧石器時代の石器だ」。顧氏は「細かく観察すれば、それぞれの石器が後期旧石器時代の異なる段階の特徴を持っているのが分かる」と説明。一連の遺物は細石器技術の誕生から発展に至る全過程を余すことなく示しており、中原地区の後期旧石器時代の遺物の年代尺度を確立していると解説した。
「嵩山(すうざん)東麓は裴李崗文化の核心分布域であり、後期旧石器時代の遺構も密集している。旧石器時代から新石器時代への移行を探る上で理想的な地域だ」。顧氏によると、中原地区ではこれまでに旧・新石器時代の遺跡が多数発見され、比較的整った文化序列が確立しているが、裴李崗で見つかったこれまでにない明確で連続した文化層は指標とするに十分な意義を持つという。
狩猟採集から定住農業へ。裴李崗遺跡は中原の先史社会の連続的進化の過程を読み解く最も重要な手掛かりの一つとなっている。