
2025年度「中国科学の十大進展」に関するレクチャーに出席する竇科峰院士と西京医院の異種移植チーム。(北京=新華社配信)
【新華社北京3月30日】中国国家自然科学基金委員会はこのほど、2025年度「中国科学の十大進展」を発表、「ゲノム編集豚の肝臓移植による異種器官移植の障壁克服」が成果の一つに選出された。
肝臓は人体で最も多忙な臓器で、終末期の肝疾患患者にとって肝移植は唯一の救命手段であるが、ドナー不足により多くの患者が移植を待つ間に命を落としている。豚の臓器は大きさや生理機能が人間の臓器に極めて近く、理想的なドナー候補とされるが、「異種移植」には拒絶反応などの高い障壁が存在する。
中国科学院の竇科峰(とう・かほう)院士(アカデミー会員)が率いる空軍軍医大学西京医院のチームは24年3月、ゲノム編集した豚の肝臓を脳死状態の患者に移植することに成功した。この特別な肝臓は10日間にわたって正常に稼働、胆汁の分泌やタンパク質の合成を行い、顕著な拒絶反応も認められなかった。
竇氏は、チームが豚のゲノムに対して6カ所の精密な改変を行ったと紹介。「危険信号」遺伝子3種類をノックアウト(破壊)し、ヒト補体制御タンパク遺伝子2種類と血栓制御タンパク遺伝子1種類を挿入した。移植前の検査で、ドナーの豚が内在性レトロウイルスを保有していないことを確認しており、異種間感染のリスクを排除した。
手術では、チームは革新的な「異所性補助移植」を採用した。患者自身の肝臓を温存したまま、豚の肝臓を腹腔内の別の部位に移植し、血管バイパスによって血流を確保することで、豚の肝臓の機能を検証しながら、患者の安全も確保した。
術中・術後の経過について竇氏は「移植手術中、血流回復からわずか2時間で豚の肝臓が黄金色の胆汁を分泌し始めた。術後10日間、胆汁分泌量は増加を続け、血液中からは豚の肝臓が合成したアルブミンが検出された。超音波診断では血流は良好で、主要な肝機能指標は終始正常、超急性拒絶反応は見られなかった」と説明した。
竇氏は、今回の移植はゲノム編集した豚の肝臓が人の体内で生理機能を発揮して、短期間生存できることを世界で初めて証明し、異種肝移植分野の空白を埋めると強調した。研究成果は2025年3月、英科学誌ネイチャーのオンライン版に掲載された。