
月の南極エイトケン盆地を形成した隕石衝突の模式図。(北京=新華社配信)
【新華社北京1月15日】中国の研究者がこのほど、月探査機「嫦娥6号」が月の裏側から持ち帰った土壌試料を分析し、巨大隕石(いんせき)の衝突が月内部の化学的性質を変えたことを明らかにした。この発見は、大規模な衝突が月の進化に与えた影響を理解するとともに、月面の表側と裏側の「二分性」と呼ばれる非対称性がどのように形成されたかを解明する上で、重要な手がかりとなる。
月の誕生以降、小惑星の衝突は月面に無数のクレーターや盆地を残し、地形や化学組成を大きく変えてきた。一方で、初期に起きた大規模な衝突が、月の深部にどのような影響を及ぼしたのかについては、十分に解明されていなかった。2024年に嫦娥6号が月最大の衝突盆地である南極エイトケン盆地で採取した試料は、この疑問を解くための重要な物証とされる。
中国科学院地質・地球物理研究所の田恒次(でん・こうじ)氏率いる研究チームは今回、嫦娥6号が持ち帰った玄武岩の粒子に対し、高精度のカリウム同位体分析を行った。その結果、月の表側で採取された玄武岩と比べ、同位体の比率が異なることが明らかとなった。
田氏によると、カリウムや亜鉛、ガリウムといった中程度の揮発性元素は、高温環境下で揮発や分留が起きやすい。衝突によって生じる瞬間的な高温・高圧の過程では、軽い同位体が優先的に放出される傾向があり、同位体組成の違いは、衝突が月のマントルを変化させたことを裏付けるという。同位体組成は、個体を識別する指紋のような役割を果たし、衝突時の温度やエネルギー、物質の起源に関する情報を克明に記録していると説明する。
研究チームはさらに、こうした揮発性元素の消失が、月裏側の深部におけるマグマの形成や火山活動を抑制した可能性が高いと指摘した。これは、月の表側と裏側で異なる地質進化が見られる理由を考える上で、新たな手がかりになるとしている。
研究成果は北京時間1月13日、国際学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に掲載された。