「中国の靴の都」福建省晋江市、スマート製造で進化中

「中国の靴の都」福建省晋江市、スマート製造で進化中

新華社 | 2025-12-24 19:21:45

22日、長泰服装織造の倉庫で材料を運搬する無人搬送車(AGV)。(晋江=新華社記者/許芸潁)

 【新華社晋江12月24日】中国南東沿岸に位置する福建省晋江市は「中国の靴の都」として知られ、年間のスニーカー生産量は13億足を超え、世界の生産量の20%を占める。従来型製造業で発展してきたこの省直轄県級市では現在、多くの企業が研究開発やデータ活用、スマート製造に視線を向け始めている。

 晋江で育ったトップスポーツブランド、安踏(ANTA)の変化はまさにその動向を象徴している。ANTAグループの2024年売上高は708億2600万元(1元=約22円)を突破した。25年上半期(1~6月)には売上高成長率が14・3%に達し、売上高は385億元を超えた。規模が拡大を続ける一方で、企業の生産方式や運営モデルでも抜本的な調整が進んでいる。

 デザイン・開発段階で、ANTAは人工知能(AI)や仮想現実(VR)技術を導入し、最短4日で外観デザインを完成させ、受注・生産プロセスへ移行できるようになった。在庫管理や生産面では、スマート化による高度化を通じて、人と機械の協働、スマートスケジューリング、フレキシブル・リーン生産方式を実現し、効率を大幅に向上させた。

 同社はさらに「AI365戦略」を発表し、業界初となるAIデザイン大規模モデルを打ち出した。今後3年以内に社内でのAI活用率を50%以上に引き上げることを計画している。現在ANTAのAI支援によりデザインされた商品の受注額はすでに25億元を超え、コンバージョン率(顧客転換率)は20%向上した。

 こうした変化は、業界のリーディング企業に限ったことではない。同市にある長泰服装織造の生産現場でも、別の形の変革がはっきりと見て取れる。工場エリアに足を踏み入れると、まるでSF映画のような光景が広がっている。

中国スポーツ用品大手、安踏(ANTA)グループが晋江市に開設した、博物館とデジタル化されたスマートスポーツの複合施設「安踏982クリエーティブスペース」。(資料写真、晋江=新華社記者/魏培全)

 同社は通信大手の中国電信(チャイナテレコム)と提携し、福建省初の第5世代移動通信システム(5G)対応スマート下着工場を建設した。工場内では、無人搬送車(AGV)が5Gネットワークの支援を受けて自律走行し、自動でエレベーターを利用して倉庫と生産ラインの間を往復している。自動ミシンは5GとAIによる視覚検査システムと連携し、ゴムバンドの質の高い縫製を実現。5Gスマートサイネージ上では、注文の進捗(しんちょく)状況や設備の稼働状況、生産量データがリアルタイムで更新される。糸から完成品まで、全ての工程を追跡、監視できる。現在、同工場では1日平均20万枚の下着を生産することができ、生産効率と安定性は大幅に向上した。

 こうした変化の背景は、政府による的確な支援を抜きにしては語れない。同市工業情報化局は産業のニーズを踏まえ、イノベーション主体の育成、工業デザイン、スマート製造、グリーン(環境配慮型)・低炭素といった重要分野に力を注ぎ、協同イノベーションの確かな基盤を築いてきた。一方、同市科学技術局は「人」と「成果」に重点を置き、インセンティブ制度を整備。技術の実用化や科学技術賞の受賞などに対して最大200万元の報奨金を支給するとともに、研究成果の実用化プラットフォームの構築を進めており、すでに14の高水準な研究プラットフォームが設立され、産学研連携を継続的に促進している。今年に入ってから、市全体の技術契約成約額は5億7500万元に達し、研究成果のより迅速な生産プロセスへの導入を後押ししている。

 中国の「靴の都」から出発した同市は、既存の産業基盤を元に、テクノロジーの力と官民連携により、従来型産業をより質の高い形へと進化させている。この道筋は、製造業が域内総生産(GDP)に大きな割合を占める県レベル地域に、観察可能で再現性のある構造転換モデルを提供している。(記者/許芸潁、程立葳)

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