高市発言は「国家の危機」招く 日本国内からも批判相次ぐ

高市発言は「国家の危機」招く 日本国内からも批判相次ぐ

新華社 | 2025-11-18 15:50:00

17日、東京タワー周辺の景色。(東京=新華社記者/賈浩成)

 【新華社東京11月18日】高市首相の台湾をめぐる発言が日本国内でも大きな反発を呼んでいる。東京の首相官邸前では15日夜も、市民がプラカードを掲げ、発言の早期撤回と謝罪、首相退陣を求めて声を上げた。

 高市氏の発言は法理と歴史的事実を無視したもので、一連の言動は地域の安定を脅かすだけでなく、日本自身にも災いを招いている。日本の政治家や市民からは、高市氏は首相として日本を「国家の危機」へと追い込んでおり、その罪は極めて重いとの批判が出ている。

 事の発端は、7日の衆議院予算委員会での答弁だった。いわゆる「台湾有事」がどのような状況で「存立危機事態」に該当するのかという立憲民主党の岡田克也議員の追及に対し、高市氏は最終的に「戦艦を使って武力の行使も伴うものであれば、どう考えても存立危機事態になり得るケースだ」と述べた。

 石破茂前首相はこの発言について「『台湾有事は日本有事だ』と言っているのに近い」と指摘した。つまり高市氏の発言は、台湾海峡で衝突が起きた場合に日本が軍事介入する可能性を示唆するものだと受け止められている。

 立憲民主党代表で元首相の野田佳彦氏も16日の党会合で高市発言を批判し、「物事を言い過ぎてしまい、日中両国の関係がとても厳しい局面になってしまった。かなり軽率だった」と語った。

 高市氏は台湾をめぐる問題で、以前から危険な言動を繰り返してきた。「台湾有事」が「存立危機事態」に当たり得ると盛んに主張してきただけでなく、今年4月には国会議員として台湾を訪れ、「日台の安全保障協力の強化」まで掲げている。

 高市氏をはじめとする日本の右翼勢力は「台湾をもって中国を制する」という発想に固執してきた。その意図を裏付けるかのように、高市政権は発足後、軍事力拡大へ次々と踏み出した。防衛費を大幅に増額し、対国内総生産(GDP)比2%の目標を2年前倒しで実現すると表明。国家安全保障戦略など「安保3文書」の改定に着手し、防衛装備移転三原則の運用指針見直しにより武器輸出の制限緩和を狙うほか、原子力潜水艦の開発も示唆している。

16日、東京でシャッターを半分閉めた店舗の前を歩く歩行者。(東京=新華社記者/賈浩成)

 安倍晋三氏のように右派と目される首相でさえ、在任中に台湾海峡情勢が「存立危機事態」になり得ると明言したことはなかった。中国国際問題研究院アジア太平洋研究所の項昊宇(こう・こうう)特別招聘研究員は、高市氏の発言は自身の右派的な本質を露呈したもので、右派勢力が勢いを増す日本の政治環境の中では、こうした人物が現れるのにも一定の必然性があるとの見解を示した。

 東京大学の佐橋亮教授(国際政治学)は高市発言に「大変驚いた」と述べ、高市氏の説明する「存立危機事態」には法的根拠が乏しく、厳密な認定プロセスも存在しないとして、国会で個人的な感想を語ったかのようだと批判した。

 日本の国内法における「存立危機事態」の根拠は2015年成立の安全保障関連法にある。同法は「日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによって日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」と定義している。

 法政大学の趙宏偉(ちょう・こうい)教授は、「集団的自衛権」の解禁を狙いとしたこの法律でさえ、いわゆる「存立危機事態」は「他国」が攻撃された場合に限られていると指摘する。台湾は「国家」ではなく、日本政府も台湾を「国家」として承認していない以上、この規定が台湾海峡情勢に適用されることはない。

 国際法秩序を形づくる「カイロ宣言」と「ポツダム宣言」は、日本が奪取した台湾地区と澎湖諸島を中国に返還することを明確に定めており、戦後国際秩序の重要な一部をなしている。元東京都知事で国際政治学者の舛添要一氏は、「台湾は中国の一部」であることは国際法上明らかで、「日本が軍事的に介入すれば侵略と見なされる」と述べた。

 「一つの中国」原則は日本政府の約束でもある。1972年の「中日共同声明」は、日本政府が「中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する」と明記し、「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部」という中国政府の立場を「十分理解し、尊重」するとしている。さらに1998年と2008年の重要な2国間文書においても、日本側はこの立場を順守することを改めて確認した。

 鳩山由紀夫元首相は、日本は「台湾は中国の一部」という立場を尊重しており、台湾問題は中国の内政で、日本は介入すべきでないと指摘した。

17日、東京都内の飲食店で食事をする観光客。(東京=新華社記者/賈浩成)

 こうした高市氏の誤った発言に対し、国内外の専門家や学者が、極めて危険なシグナルであり、地域の平和と安定を揺るがし、日本自身にも深刻な害をもたらすと警告する。

 第一に、地域の安定を脅かす。国民党の洪秀柱(こう・しゅうちゅう)元主席は15日、「台湾海峡のことは日本人に関係ない」とSNS上で発信した。高市氏が「台湾海峡での衝突」と日本の「存立危機事態」を公然と結びつけ、両岸関係の位置づけを揺るがすだけでなく、架空の軍事シナリオを描き、日本の武力介入の可能性まで示唆していると批判。こうした発言は挑発であり、台湾を危険の縁へと追いやり、日本軍国主義の残滓(ざんし)がいまだ消えていないことを露呈していると断じた。

 ロシア科学アカデミーの日本問題専門家ワレリー・キスタノフ氏は「前例のない発言」であり、地域の緊張を高め、不安定化や衝突の火種になるだけだと述べた。マレーシア・テイラーズ大学の国際関係学者ジュリア・ロクニファード氏は、日本は東アジアの不安定要因になるのではなく、国内の社会経済問題の解決に力を注ぐべきだと批判した。

 第二に、中日関係を損なう。両国は互いに重要な隣国であり、関係を長期的に健全かつ安定的に発展させることは、両国民と国際社会の共通の期待だ。

 多くの日本の政治家が指摘するように、高市氏の言動は日本の将来的な政策の幅を大きく狭める。立憲民主党の小沢一郎衆議院議員は15日、SNS上で、高市氏の「攻撃的な一言」は、中日関係の毀損(きそん)、国民感情の悪化、貿易の減少、人の往来の制限といった深刻な結果を引き起こしかねないと警告した。

 第三に、日本自身への打撃も大きい。中国は日本最大の貿易相手国であり、第2位の輸出先、最大の輸入先でもある。2024年の両国の貿易総額は3083億ドル(1ドル=約155円)、うち日本からの対中輸出は1562億5千万ドルに上る。日本の観光庁の統計でも、中国人観光客の日本での消費額は24年、各国観光客の中で最も多かった。「村山談話を継承し発展させる会」の藤田高景理事長は、日中関係が悪化すれば「苦しむのは日本国民だ」と述べ、高市氏の言動は極めて「罪深い」と批判した。(記者/李子越、陳沢安)

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