中国、トリウム溶融塩炉で核燃料変換に成功 世界初

中国、トリウム溶融塩炉で核燃料変換に成功 世界初

新華社 | 2025-11-04 23:12:15

10月24日、甘粛省武威市民勤県に建設された2メガワット液体燃料型トリウム溶融塩実験炉の建屋。(ドローンから、武威=新華社記者/金立旺)

 【新華社北京11月4日】中国科学院は1日、同院上海応用物理研究所が中心となって建設した出力2メガワットの液体燃料型トリウム溶融塩実験炉が、初めてトリウム・ウラン核燃料の変換に成功したと明らかにした。

 実験ではトリウムを投入した溶融塩炉の運転データを取得。運転中にトリウム燃料の投入を実現した世界で唯一の溶融塩炉となった。今回の成果は、溶融塩炉型の原子力エネルギーシステムによるトリウム資源の利用が技術的に可能であることを証明した。

 トリウムは放射能の弱い銀白色の金属で、岩石中に天然に存在する。トリウム溶融塩炉は、トリウムを燃料、高温溶融塩を冷却材とする第4世代の先進的な原子力エネルギーシステムで、水冷を必要とせず、常圧運転、高温出力などの利点を持つ。技術路線は豊富なトリウム資源を持つ中国の資源特性に合致しており、太陽光や風力、高温溶融塩蓄熱、高温水素製造、石炭・ガス・石油化学工業などの産業と深く融合し、多様なエネルギーを相互に補完する低炭素複合エネルギーシステムを構築できる。

10月24日、2メガワット液体燃料型トリウム溶融塩実験炉の建屋内で、ロボットアームを用いて燃料塩試料を分析する研究職員。(武威=新華社記者/金立旺)

 中国科学院上海応用物理研究所の専門家は「トリウム溶融塩炉は現在広く使われている加圧水型原子炉と異なり、高温の液体溶融塩を冷却材として用いることから巨大な圧力容器も大量の冷却水も必要としない」と説明。「核燃料を高温の塩の中に入れて発電するようなもので、安全かつ効率的だ」と述べた。

 実験炉は2020年1月に着工し、2024年6月に定格出力での運転を実現。同年10月に世界で初めて溶融塩炉へトリウムを投入し、世界に先駆けて独自の特徴を備えた溶融塩炉とトリウム・ウラン燃料サイクル研究プラットフォームを構築した。現在は研究チームがトリウム投入後の重要な科学的課題について体系的な研究を進めている。

10月24日、2メガワット液体燃料型トリウム溶融塩実験炉の外で、環境モニタリングを実施する研究職員。(武威=新華社記者/金立旺)

10月24日、2メガワット液体燃料型トリウム溶融塩実験炉の建屋内で、ロボットアームを用いて燃料塩試料を取り出す研究職員。(武威=新華社記者/金立旺)

10月24日、2メガワット液体燃料型トリウム溶融塩実験炉の主制御室で作業にあたる研究職員ら。(武威=新華社記者/金立旺)

10月23日、中国科学院上海応用物理研究所嘉定園区の溶接実験室で、液体燃料型トリウム溶融塩実験炉の建設に用いる合金材料の溶接状況を観察する研究者。(上海=新華社記者/金立旺)

10月23日、中国科学院上海応用物理研究所嘉定園区のクリープ試験室で、液体燃料型トリウム溶融塩実験炉の建設に用いる合金材料の試料を設置する研究者。(上海=新華社記者/金立旺)

10月23日、中国科学院上海応用物理研究所嘉定園区の非破壊検査実験室で、液体燃料型トリウム溶融塩実験炉の建設に用いる合金材料の溶接品質を確認する研究者。(上海=新華社記者/金立旺)

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