中国、デジタル技術で文化遺産保護・継承に新たな道

中国、デジタル技術で文化遺産保護・継承に新たな道

新華社 | 2025-10-10 23:38:15

北京大運河博物館の可視化収蔵庫。来館者はガラス越しに庫内の乾隆大蔵経の木版や家具を見学できる。収蔵庫は制御システムを備え、画面操作で調整する。(8月26日撮影、北京=新華社記者/羅鑫)

 【新華社北京10月10日】中国北京市で9月に開催された「2025北京文化フォーラム」では、デジタル技術を活用した文化遺産の保護と継承が大きな話題となった。

 デジタル化は経済・社会の発展に浸透し、デジタル技術が従来の生産や生活の様式を劇的に変え、中国内外で文化遺産の保護と継承に新たな道を切り開いている。

 国家文物局の饒権(じょう・けん)局長は、ビッグデータやモノのインターネット(IoT)、クラウドコンピューティングなどを基盤とするデジタル安全監視プラットフォームがスマートセンサーを通じて文化財の安全上のリスクを警告し、救出型保護から予防型保護への転換を力強く支えていると紹介した。

北京文化フォーラムの並行フォーラム「保護と継承:デジタル化による文化遺産の活性化」で、清代の沈没船「長江口2号」の考古学調査と保護のためのデジタルツインシステムを紹介する中国側出席者。(9月23日撮影、北京=新華社記者/羅鑫)

 中国はレベルや種類もさまざまな多くの文化遺産を広範囲に有する。かつては人手を要する巡回や紙での記録に依存していたため、非効率で時間がかかり、体系性に欠けていた。今ではデジタル技術の導入によって文化財管理の体制と能力が現代化され、一部地域で見られた「足とペン」に頼った業務の限界を克服している。

 「経験主導型」から「データ主導型」へ、単一分野の研究から横断的な連携へ、技術の力は考古学や歴史研究の能力を飛躍的に高め、文化財の価値の掘り起こしと解釈に新たなパラダイムをもたらした。デジタルメディアによって文化遺産展示の新たな形態が生まれ、博物館のデジタル化とスマート化が加速している。

 故宮博物院の朱鴻文(しゅ・こうぶん)副院長は、同院が所蔵する195万点(組)を超える文化財について、過去に蓄積したデータを基に今後10~20年かけて他の文化財のデータ収集を加速、改善し、将来は情報を一般公開したいと話した。

北京文化フォーラムの並行フォーラム「保護と継承:デジタル化による文化遺産の活性化」で、故宮博物院の文化財デジタル資源を紹介する朱鴻文副院長。(9月23日撮影、北京=新華社記者/羅鑫)

 ロシアの文化財・博物館学分野の専門家、アンナ・トラプコワ氏は、博物館のデジタルプラットフォームはアーカイブ保存に加え、オンライン展示にも活用できると指摘。ロシアではポッドキャストや動画、デジタルマップなど多様なオンライン展示がインターネット時代の若者たちの関心を引き、自国の歴史と文化への理解を深めるのに役立っていると紹介した。

 フォーラム出席者は新たなデジタルコンテンツの発展、デジタル資源の開放推進、文化遺産と一般市民との架け橋構築で合意した。

 フランスの地域圏代表として参加したソフィー・ロトコフ氏は、地方政府が文化遺産の価値を高め、観光体験を向上させる革新的な技術プロジェクトを支援していると説明。建築物や景観、遺跡の3D再現、文化財のデジタル化、インタラクティブな見学ルートの開発などを例に挙げ、「文化遺産の保護とデジタル展示の組み合わせが極めて重要になる」と述べた。(記者/羅鑫)

故宮博物院大高玄殿内に設置された文化財対照スクリーン。超高精細デジタル資源を活用して同院所蔵の書画を展示している。(9月24日撮影、北京=新華社記者/羅鑫)

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