ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で観測した「Wolf1130C」のスペクトル(水色の線)。右側拡大部分はWolf 1130Cのホスフィンスペクトル(水色の線)とホスフィン標準スペクトル(緑色の線)の比較図。(南京=新華社配信)
【新華社南京10月6日】中国江蘇省の南京大学は3日、同大天文・空間科学学院の張曽華(ちょう・そか)副教授が参加する多国籍研究チームが太陽系外の天体でホスフィン(リン化水素)を検出し、研究成果まとめた論文を同日、国際学術誌サイエンス電子版に発表したと明らかにした。
ホスフィンを検出したのは、地球から54光年離れた三重星系にある褐色矮星「Wolf1130C」。サイエンスの査読者は、今回の研究が画期的な意義を持つと指摘。ホスフィンは木星や土星の大気中に確認されており、理論上は褐色矮星に豊富に存在するとされていたが、これまでの観測結果は異なっていたとし、Wolf1130Cの研究により褐色矮星の大気環境に対する科学界の理解が一層深まることが期待されると評価した。
「Wolf1130C」が属する三重星系と太陽との相対的な大きさを示した図。左端が太陽で、中央が赤色矮星「Wolf 1130A」、右は上が「Wolf1130C」、下が白色矮星「Wolf1130B」。(南京=新華社配信)
地球上のホスフィンは、一般的に有機物の腐敗や一部の産業活動により生成されるという。張氏は、太陽系外の天体ではこれまでホスフィンの痕跡を発見することはできなかったが、Wolf1130Cの大気逆解析モデリングの結果、分子の約1千万分の1がホスフィンであることが分かったと説明。ただ、同時に「なぜこれまで太陽系外の天体でホスフィンが見つからなかったのか」「Wolf1130Cにどんな特異性があるのか」という二つの疑問が生じたという。
張氏は、チームが研究により二つの可能性を導き出したと紹介。一つは、リンは酸素と結びついて三酸化二リンなどの酸化物となりやすいが、Wolf1130Cには十分な酸素がないためリンが水素と結合してホスフィンを生成する機会があったこと。もう一つは、ホスフィンが褐色矮星の二つの近接連星からもたらされた可能性があることだと説明した。
張氏によると、多国籍研究チームは現在、新たな観測計画を策定しており、ほかの褐色矮星でもホスフィンを発見することで、理論仮説の検証を進めていくという。(記者/陳席元)