青海省ゴロク・チベット族自治州瑪多県で見つかった尕日塘秦刻石。(7月25日撮影、瑪多=新華社記者/杜笑微)
【新華社西寧9月17日】中国国家文物局は15日、青海省果洛チベット族自治州瑪多(ばた)県卓譲郷で見つかった刻石を秦代のものと確認したと発表した。歴史的、芸術的、科学的に重要な価値があるという。
刻石は扎陵(ザリン)湖畔で見つかり「尕日塘(ガンリタン)秦刻石」と命名された。
中国社会科学院考古研究所の趙超(ちょう・ちょう)研究員は、現存する秦代の刻石は泰山刻石や近年発見された秦始皇帝陵建築用石刻銘など数種類あるが、いずれも原位置で保存されておらず、国内では尕日塘秦刻石が原位置に残る唯一の秦代刻石になると説明。標高の最も高い場所にある秦代刻石でもあるという。
刻石は2020年に青海師範大学が調査で発見。中国社会科学院考古研究所の仝涛(どう・とう)研究員が今年6月に発表した論文で秦代の刻石と主張して注目を集めたが、一部の専門家は年代などで異なる見解を示していた。
中国文化遺産研究院と青海省文物考古研究院が中心となり、石質文化財保護や秦漢考古学、古文字学、書法・篆刻(てんこく)などの専門家を集め、2回の現地調査で刻石本体と保存環境などのデータを獲得。慎重な研究を経て秦代の刻石と確認した。
青海省ゴロク・チベット族自治州瑪多県で見つかった尕日塘秦刻石。(7月25日撮影、瑪多=新華社記者/杜笑微)
国家文物局の鄧超(とう・ちょう)文物古跡司長によると、情報を高精度に増強するエンハンスメント技術により刻石の文字には明らかな刻み目があることが判明。平口の道具で彫刻されたもので時代的にも合致していた。鉱物と金属元素の分析により現在の合金工具を使った可能性は排除され、また、刻み目の内部と刻石の表面に風化による二次鉱物が含まれていたことで、現代に刻まれた可能性も排除された。2回の現地調査では、刻石が湖畔の傾斜地とともに、山が風を遮り、水域が局地的気候を調節する地形条件を形成していたこともわかった。
趙氏は「系統的な科学技術手段を用いて古代の石刻の年代と真贋を確認し、国内の石刻文化財の鑑定に新たな枠組みを作った」と述べた。
刻石を発見した青海師範大学の侯光良(こう・こうりょう)教授は、秦の都の咸陽(現在の陝西省)から青蔵高原の奥地にある扎陵湖までは現代の道路でも1400キロの距離があり、自然環境が厳しく、人跡まばらなこの地に当時の人々が到達するのはさらに困難だったと指摘。尕日塘秦刻石は秦代の人々が青蔵高原を勇敢に探索したことを示しており、中華文明の多元一体構造の生き生きとした「歴史の証し」であると語った。(記者/史衛燕、白瑪央措)