
遼寧省瀋陽市の書店で、新刊「格外的活法」を読者に紹介する吉井忍さん(右)。(瀋陽=新華社記者/斉琪)
【新華社瀋陽8月17日】中国語で作品を発表し、多くの中国人読者の心をつかんでいる日本人作家がいる。吉井忍さんだ。繊細で生活の情趣に満ちた筆致で、日本社会の多様で独特な側面を生き生きと描き出し、共感を呼んでいる。
今年2月には、7年がかりで取材した12人の「活法(生き方)」をまとめた新刊「格外的活法」を発行。中国各地で開かれた出版記念イベントには吉井さんも駆けつけ、各地から集まった多くの読者と交流した。「生活のテンポの速い都市では、中国の若者も日本の若者も同じような問題に直面している。勇気ある人たちの物語をもっと描き、さらに多くの若者を励ましたい」と語る。
今でこそ中国語で執筆している吉井さんだが、もともとは中国と言えば「パンダの故郷」くらいの認識しかなかったという。東京の大学に通っていた頃、夏休みに中国を旅した友人がシルクロードでの体験を繰り返し語ってくれた。それがきっかけで強い関心を抱くようになり、四川大学への留学を決意。現地での生活を通じて、中国を本当に理解し始めた。

読者の本にサインする吉井忍さん。(瀋陽=新華社配信)
中国語での執筆は、中国にある日本メディアでのインターンシップがきっかけで始まった。吉井さんの書く中国語は、最初は意味が通じなかったり、言葉の使い方が間違っていたりすることが少なくなかった。「編集者の赤ペンで原稿が真っ赤になってしまうほどだった」。そこでひそかに努力を重ね、中国語での作文を練習し、編集者が原稿に入れる修正も次第に減っていったという。
吉井さんが中国語で書いた「東京本屋」「東京八平米」「四季便当」などの作品は、中国でベストセラーとなっている。2017年には北京から東京に拠点を移したが、その後も幾度となく中国を訪れてきた。北方が好きで、特に東北地方がお気に入りだという。「人が親切で、ライフスタイルも面白い」。中国での自分自身の物語を中国語でさらにつづってみたいと考えている。(記者/武江民、斉琪)