合肥市ハイテク産業開発区にある合肥恩斯克。(合肥=新華社配信)
【新華社合肥8月17日】中国安徽省合肥市はここ数年、新エネルギー車やスマート製造などの新興産業が急速に成長するとともに、外資を引き寄せる力が強まり、企業の進出が加速している。創業100年を超えるベアリング(軸受け)大手の日本精工も、自社が中国で展開する中で最大規模のボールベアリング(玉軸受)の生産拠点を合肥に設け、中国のイノベーション・エコシステムに深く溶け込む外資企業の具体的な実例となっている。
▽創業100年の日本企業、科学技術都市・合肥に12番目の生産拠点
日本精工は1990年代に中国市場へ進出し、現地化の歩みを始めた。今では中国に13の生産拠点と19の販売拠点を持つ。2011年に12番目の生産拠点として合肥ハイテク産業開発区に設立された合肥恩斯克は、十数年間で日本精工の玉軸受生産のグローバル中核拠点へと成長。生産能力の継続的な拡充、自動化レベルの向上、現地の管理体制の改善を通じて同社の中国戦略で重要な地位を占めるようになった。
新華社の取材に応じる合肥恩斯克の重田淳・総経理。(7月22日撮影、合肥=新華社記者/何曦悦)
新華社の取材に応じた合肥恩斯克の重田淳・総経理は「合肥は中国中部の重要都市で、交通の利便性や政策面での手厚い支援、高い産業集積度などの強みを持つ。近年は新エネ車やスマート製造などが急速に発展し、中国さらには世界の製造業の構造に新たな可能性をもたらしている」と語った。
「中国の新興産業の爆発的な成長に極めて大きな可能性を感じている。特に合肥市の人型ロボットや低空経済(低高度の有人・無人機を活用した経済活動)に対する先進的な取り組みは注目に値する。合肥にはロボットのコア部品企業も多数集積し、こうした産業エコシステムは技術実装のための理想的な土壌になっている」。重田氏は、日本精工の合肥での成長に充実した産業エコシステムや地元政府のサービス効率や強力な支援は欠かせなかったと強調。今後も中国での事業成長を加速させるとし「内陸部の経済発展にも貢献していきたい」と意欲を示した。
合肥恩斯克の工場。(合肥=新華社配信)
▽中国市場がもたらすイノベーション原動力
合肥恩斯克は日本精工の海外工場の中で、主力製品である玉軸受の最大生産能力を持ち、生産工程も完全に現地化している。高性能ベアリングの供給能力を高めるとともに、スマート製造やグリーントランスフォーメーション(GX)にも積極的に取り組む。重田氏は「太陽光発電システムを導入したほか、グリーン(環境配慮型)サプライチェーンの構築を通じて二酸化炭素(CO2)排出量の削減を図り、環境負荷を抑えた生産を実践している」と説明した。
中国市場への今後の期待を表す言葉には「イノベーション」を選び「中国の顧客は新製品の導入スピードが非常に速く、新技術を積極的に試そうとする姿勢がある。これはわれわれにとってプレッシャーであると同時に、常にイノベーションを追求する強い原動力にもなっている」と述べた。
新エネ車や人工知能(AI)、グリーンエネルギーなど多くの分野で新技術が驚くほどのスピードで導入され、産業化が進む一方で、中国の顧客との協力では共創の雰囲気をますます感じるようになったと指摘。「顧客は単なる購買者としての立場にとどまらず、技術提案の初期段階から議論に参加して積極的に新しい要望を提示し、われわれの開発スピードを速めてくれる」と語った。
日本精工は複数の新興分野を中国戦略の重点に位置付けていると紹介。「人型ロボットや低空経済などの分野では、低空飛行体向けの高精度ベアリングやロボット関節用ベアリングの開発を進め、高速回転下での耐摩耗性と安定性の両立を図っている」と説明した。
合肥恩斯克の工場。(合肥=新華社配信)
▽機会を共有し、中国と共に成長
中国政府が推進する「新たな質の生産力」(科学技術イノベーションが主導し、質の高い発展を促す生産力)と産業のスマート化・グリーン化については、特に低空飛行機器や人型ロボット、新エネルギーなどの分野で大きな成長の可能性を感じると述べた。
「日本は高度な製造業や基礎研究の分野で深い蓄積があり、中国はデジタル化の推進や市場規模、技術実装のスピードで非常に強いレジリエンス(しなやかさ)と実効性を発揮している」と指摘し、日本企業は中国の可能性を機会として捉え、現地のニーズを深く理解し、中国のイノベーションから学び、自ら技術力を中国市場に深く融合させていくべきだとの考えを示した。
合肥恩斯克の現状について紹介する重田淳・総経理。(7月22日撮影、合肥=新華社記者/邱虹)
日本と中国との経済関係については、「互いの信頼・補完・利益共有」の方向へ深化を続けることに期待を寄せた。合肥での5年近くの仕事と生活に話が及ぶと「合肥という都市も、中国という国も常に成長し続けていると感じる。この地で奮闘している自分も共に成長している」と感慨を込めて語った。(記者/邱虹、何曦悦)