アリューシャン海溝の化学合成生物群集。(海口=新華社配信)
【新華社海口8月4日】水深9533メートルの海底世界には、現在知られている中で最も深い海底に生息する化学合成生物群集が存在している。これらの生物群集は太陽光に依存せず、地質流体中の化学反応を利用して代謝に必要なエネルギーを得ている。中国科学院深海科学・工程研究所が主導する研究チームはこのほど、太平洋北西部の千島・カムチャツカ海溝およびアリューシャン海溝で、これらの生物群集とその生命活動に伴う流体活動を発見した。研究成果は7月30日、国際学術誌「ネイチャー」に掲載された。
研究者らは全水深有人潜水艇「奮闘者号」を使い、9533メートルの海淵および2500キロにわたる海溝の底部で、初めて大規模な化学合成生物群集とメタン貯留層を発見した。これらの生物群集は、主に深海生物のチューブワームと軟体動物の二枚貝類から成り、硫化水素やメタンを豊富に含む流体に依存して生命を維持している。
カムチャツカ海溝で発見されたチューブワーム。(海口=新華社配信)
地球化学分析によると、これらの環境中のメタンは、堆積層の深部に存在する微生物が、有機物の分解によって発生した二酸化炭素を絶えず変換することで生成されている。これは、深海底のさらに奥深くに、未知の巨大で活発な深部生物圏が存在することを示唆している。この発見は「深海生態系は主に海洋表層から沈降する有機粒子や動物の死骸によって維持されている」という従来の見解に直接疑問を投げかけるものであり、深海の炭素循環の複雑なメカニズムを理解するために新たな視点を提供する。
さらに、研究者らによると、この研究では化学合成生物の新種の発見に加え、化学合成生物が深海生態系の構造や地球規模の炭素循環に深い影響を及ぼしている可能性があることも証明したという。科学者らは、この現象が個別の事例ではなく、世界中の海溝深くに「化学合成生物の回廊」が存在するのではと推測している。(記者/陳凱姿)
カムチャツカ海溝の化学合成生物群集。(海口=新華社配信)