「明末:ウツロノハネ」の日本語版。(成都=新華社記者/薛晨)
【新華社成都7月31日】中国発の大型アクションRPGの新作「明末:ウツロノハネ」(原題『明末:淵虚之羽』)が24日、世界でリリースされた。世界でブームを巻き起こした「黒神話:悟空」に続くAAAタイトル(多額の開発費を投入した超大作)で、四川省成都市の成都霊沢科技が開発。遺跡や文化財などをデジタルで復元して神秘的な古蜀の世界を作りだし、中国文化を担って海外進出する国産ゲームの新たなラインナップとなった。
「明末:ウツロノハネ」で再現された四川省資陽市安岳県の木門寺。創建は明代の1403~24年。(成都=新華社記者/薛晨)
作品は4月の予約販売初日にインターネット上のプラットフォームサイト「Steam」の中国地区人気ランキングで首位となったほか、世界人気ランキングでもトップ10入りを果たし、今月22日には予約販売数で全世界人気ランキング(無料ゲーム除く)の首位を獲得。ネットに接続せずに遊べるスタンドアロン型の中国国産ゲームに対する海外市場の注目度が高まり続けていることを示した。
架空の古代神話の世界を舞台とし、プレーヤーは孤高の女性戦士として、山や川を越え、古寺や遺跡を巡りながら、失われた記憶と隠された真実を追い求める。ゲームの世界観は古蜀文明を参考にし、三星堆(さんせいたい)遺跡や金沙遺跡などの要素を取り入れた。成都霊澤科技の郭心怡(かく・しんい)最高財務責任者(CFO)は「ゲームを通じて中国西南地域の文化や風貌を世界のプレーヤーに届けたい」と語った。
姜敏(きょう・びん)最高経営責任者(CEO)は、美術チームは6年の開発期間中、地域性を再現するために資陽市安岳県の毘盧洞(びるどう)やアバ・チベット族チャン族自治州理県の桃坪(とうへい)チャン寨、綿陽市平武県の報恩寺、成都市大邑県の開化寺など四川省内の文化遺跡数十カ所で実地調査と3Dスキャンを実施したと紹介。「山海経(せんがいきょう)」や「華陽国志」などの古典書籍に記載された神話のイメージも組み合わせてデジタル復元した文化財をゲームに落とし込み、神秘的な古蜀の世界を再構築したという。
「明末:ウツロノハネ」を開発した成都霊沢科技。(成都=新華社記者/薛晨)
作品中の衣装も業界関係者の注目を集めている。四川伝統文化促進会漢服専門委員会の陶柳芸(とう・りゅううん)秘書長は、作品に馬面裙(マミアンスカート=ひだ付きスカート)や短襖(たんおう=短い上着)など明代の伝統衣装が紹介されていると指摘。今後も適切で美しい漢服を身にまとったキャラクターが登場するゲームが増え、漢服文化の保護と普及に寄与していくことに期待を示した。
成都市はここ数年、ゲームやアニメ、映像などのデジタル文化クリエーティブ産業の振興に力を入れ、多くのオリジナル作品が誕生している。霊澤科技から200メートル足らずの場所には映画「哪吒之魔童降世」(邦題「ナタ~魔童降臨~」)を制作した成都可可豆動画影視があり、両社がある成都ハイテク産業開発区(成都高新区)にはデジタル文化クリエーティブ関連の企業が6千社余り集積し「哪吒」やオンラインゲーム「王者栄耀(オナー・オブ・キングス)」など世界的なヒット作品を生み出している。フランスのゲーム開発大手ユービーアイソフトも拠点を構え「アサシンクリード」「フォーオナー」などの人気ゲームを開発している。
業界関係者は、中国のスタンドアロン型ゲームは「黒神話:悟空」「明末:淵虚之羽」などの作品が続々と登場する中で質の高さと多様性を武器に国際市場に進出しつつあるとの見方を示す。海外のプレーヤーにとっては、これらのゲームが中国独自の美意識や神話体系、物語の語り口に触れるための「窓口」となり始めている。
昨年末に発表された「中国ゲーム産業報告(2024)」による国内ゲーム市場の実質売上高は3257億8300万元(1元=約21円)、ユーザー数は6億7400万人。国産ゲームの海外売上高は185億5700万ドル(1ドル=約147円)に上った。(記者/李倩薇、薛晨、王灝)
中国動画配信大手Bilibili(ビリビリ)が上海で開いたアニメ・ゲームファンの祭典「ビリビリワールド2025」で「明末:ウツロノハネ」を試すプレーヤーら。(7月11日撮影、成都=新華社記者/薛晨)
11日、中国動画配信大手Bilibili(ビリビリ)が上海で開いたアニメ・ゲームファンの祭典「ビリビリワールド2025」の「明末:ウツロノハネ」ブース。(7月11日撮影、成都=新華社記者/薛晨)
四川省資陽市安岳県の安岳摩崖(まがい)石刻をデジタルスキャンする「明末:ウツロノハネ」の開発チーム。(成都=新華社記者/薛晨)
16日、ゲーム性能をテストし、リリースの準備を進める「明末:ウツロノハネ」の開発スタッフ。(7月16日撮影、成都=新華社記者/薛晨)
「明末:ウツロノハネ」で再現された四川省アバ・チベット族チャン族自治州の桃坪チャン寨。現在も人が住む望楼と民家の一体型建築群としては世界で最も保存状態が良く「神秘的な東洋の古城」と呼ばれる。(成都=新華社記者/薛晨)
「明末:ウツロノハネ」に出現する三星堆遺跡出土の青銅大立人像。(成都=新華社記者/薛晨)
16日、ゲーム性能をテストし、リリースの準備を進める「明末:ウツロノハネ」の開発スタッフ。(成都=新華社記者/薛晨)
「明末:ウツロノハネ」で再現された四川省資陽市安岳県の安岳石窟。1万体以上の摩崖造像があり、中国石窟芸術の重要な一部となっている。(成都=新華社記者/薛晨)
四川省資陽市安岳県の安岳摩崖(まがい)石刻をデジタルスキャンする「明末:ウツロノハネ」の開発チーム。(成都=新華社記者/薛晨)
「明末:ウツロノハネ」の武術モーションキャプチャー作業。(7月16日撮影、成都=新華社記者/薛晨)