「読む」が変わる時代 中国の若者と本の新しい関係

「読む」が変わる時代 中国の若者と本の新しい関係

新華社 | 2025-07-27 17:32:45

ガラス張りの空間が開放的な北京都市図書館。(2024年1月14日撮影、北京=新華社記者/彭子洋)

 【新華社北京7月27日】中国全土で読書熱が高まる中、若者たちはそれぞれのスタイルで本との新たな関係を築き始めている。紙の本を手にとる従来の読書から、オーディオブックや短編動画などのデジタル形式に至るまで、「新しい空間」「新しい形式」で「新しいもの」を読む――そんな光景が今、中国の都市部を中心に広がっている。

 北京市通州区にある北京都市図書館は、2023年末の開館から2年足らずで大きな話題を呼び、今年は米タイム誌の「世界の素晴らしい場所100選」にも選ばれた。世界最大級の閲覧型図書館で、ガラス張りの開放的な空間には、読書や勉強に励む若者の姿が絶えない。今年3月までに428万人以上が来館し、3400件以上の文化イベントが開催されるなど、「勉強もできる映えスポット」として人気を高めている。

米タイム誌の「世界の素晴らしい場所100選」にも選ばれた北京都市図書館。(2024年1月14日撮影、北京=新華社記者/彭子洋)

 特筆すべきは、館内に設けられた「メタバース体験館」だ。仮想現実(VR)とデジタルツイン技術を融合し、図書館をバーチャル空間に再現。魯迅(ろじん)や未来人の姿をしたデジタルヒューマンと対話したり、薬草図鑑「本草綱目」や工芸技術書「天工開物」などの古典籍を3Dコンテンツとして体験的に「読む」ことができる。

 若者たちの読書空間は街中にも広がっている。北京市昌平区の「魔方都市書房」では、1杯のコーヒーを飲みながら個室で丸一日過ごす人も少なくない。「快適な環境で雰囲気も最高。週1回は来ている」と大学生の趙宇凡(ちょう・うはん)さんは語る。「毎日少しずつでも本を読むようにしたい」と、1日1元(約21円)で何度でも本を借りられる同店の「365日読書フリープラン」にも参加している。

江西省宜春市にある獅子山公園都市書房で読書する市民ら。(2024年1月5日撮影、宜春=新華社配信/周亮)

 オーディオブックも若者の間で人気を集めている。29歳の唐さんは、通勤中の地下鉄で本を「聞く」のが習慣になっており、「紙の本より柔軟に楽しめ、ラジオドラマのような没入感がある」と話す。伝記のジャンルがお気に入りで、内容を吸収できるだけでなく、リラックスもできると感じている。

 音声配信プラットフォームの「喜馬拉雅(シマラヤ)」や「蜻蜓(チンティン)FM」には、武侠小説から生活百科まで、利用者のニーズに応える幅広いコンテンツがそろう。24年の読書習慣に関する全国調査では、オーディオブックの利用者は成人の38・5%を占め、前年を2・2ポイント上回った。

浙江省湖州市の書店でオーディオブックを試聴する客。(2021年4月22日撮影、湖州=新華社記者/翁忻暘)

 また短編動画を通じた「見る読書」も流行している。動画投稿アプリ「抖音(ドウイン)」では、多くのブロガーたちが1冊の本を数分で紹介し、さまざまな映像を交えて内容や人物を分かりやすく解説。視聴者が作品のエッセンスをつかむ手助けをしている。

 例えば「紅楼夢」の解説動画は1300万以上の「いいね」を獲得。視聴者の「心雨飛飛」さんは「複雑な人物関係が整理されていて、見終わった後に満足感があった」とコメントした。抖音のデータによると、5分以上の読書系動画の投稿数は24年、前年の4・4倍に増え、再生回数の2・4倍に伸びている。

海の中のような海南省海口市にある新華書店海島書香店。(2024年11月13日撮影、海口=新華社記者/蒲暁旭)

 読書コンテンツの傾向にも変化が見られる。映画やドラマの人気作が原作本の売り上げを後押ししている。電子書籍大手の閲文集団(チャイナ・リテラチャー)の担当者は、「映像化された作品から原作への回帰」が読書普及の供給側のイノベーションとなっていると分析。出版業界の多角的な展開にもつながっているという。

 さまざまな知識を楽しく学べる教養系漫画も若者に支持されている。クリエーターアカウント「混知」(人気教養系漫画チーム)は複数のプラットフォームで合計4千万人近くのユーザーを集め、歴史、科学、哲学など多分野にわたる書籍の販売部数は4千万冊を超える。代表作「30分でわかる漫画中国史」は、ユーモラスな語り口での歴史解説が人気を呼んでいる。

 図書館、書店、オーディオ、動画、そして漫画。多様な形式で読書に親しむ若者たちの姿からは、読書という古くからの伝統が、時代に合わせて柔軟に生まれ変わっている様子がうかがえる。(記者/李卓璠)

天津市の旧イタリア租界にある鐘書閣書店で開かれた読書交流会。(2024年10月2日撮影、天津=新華社記者/孫凡越)

天津市の旧イタリア租界にある鐘書閣書店。(2024年10月2日撮影、天津=新華社記者/孫凡越)

内モンゴル自治区ウランチャブ市の言知書店で自習する市民ら。(4月23日撮影、ウランチャブ=新華社記者/李志鵬)

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