3日、新華社の取材で撮影に応じるサイゼリヤの長岡伸・海外事業本部長。(広州=新華社記者/彭純)
【新華社広州7月26日】中国で「薩莉亜(サーリーヤー)」と呼ばれるイタリア料理のレストランチェーンが、日本企業のサイゼリヤであることを知る人は少ない。また、サイゼリヤが中国で500店舗を展開し、年間営業利益は60億円と日本国内の3倍に達していることを知る人はさらに少ない。
広東省広州市でサイゼリヤの中国国内子会社4社を管理する統括会社「薩莉亜餐飲管理」の総経理を務め、同時に中国を含めた海外子会社9社を統括する長岡伸・海外事業本部長がこのほど、新華社の取材に応じ、「異色の日本企業」の中国での発展ストーリーを語った。
沿海地域から内陸部までの「千店舗計画」
長岡氏は今年62歳。サイゼリヤに40年近く勤務し、現場からキャリアを積み重ねて経営幹部に至った。中国でのサイゼリヤの歩みを振り返る話しぶりは、一つ一つの記憶がすらすらとよみがえり、途切れることがなかった。
2003年にサイゼリヤが初の海外店舗として上海に出店した当時、ほとんどの中国人にとってイタリア料理はなじみの薄いものだった。長岡氏は「中国の人たちは西洋料理を高価なものと見ていたが、われわれは本格的なイタリア料理を手頃な価格で提供できることを証明したかった」と語った。
その後、2007年に広州、2008年に北京にそれぞれ子会社を設立。今年7月にはグループの中国展開を加速させ、中国事業の統合を図るため、広東省に中国子会社の統括会社を立ち上げた。新会社は子会社への業務指導や子会社間の協力体制の調整を行い、今後はメニュー開発も標準化管理を進めていくという。長岡氏は、地域によって価格は異なるがメニューは統一していくとし「わが社は中国市場を一番重視している。中国での利益は既に日本を上回っており、将来性も日本よりはるかに大きい」と述べた。
サイゼリヤは現在、中国で500店舗を展開し、店舗数は年間約15%のペースで着実に拡大している。今年はさらに70~80店舗を出店する計画だという。
長岡氏は「来年は湖北省武漢市に1号店をオープンする。武漢周辺地域だけで100店は出店できると思っている」と語りつつも、サイゼリヤは早期のリターンを目指すのではなく、持続可能な成長をより重視していると強調した。
3日、新華社の取材に応じるサイゼリヤの長岡伸・海外事業本部長。(広州=新華社記者/常博深)
現地化を推進、親しまれるイタリアンに
「郷に入っては郷に従え」は、サイゼリヤが中国で確実に根を下ろすための重要な戦略となっている。
長岡氏によると、中国でも当初はメニューと味をほぼ日本に合わせていたが、数十年の改良を経て、より中国人の好みに合うよう大幅に調整した。中国人スタッフと日本人スタッフが議論を重ね、中国の食材を使った「麻辣(マーラー)パスタ」など中国ならではのメニューも開発。ソースも中国人が好むブラックペッパーソースを取り入れた。
サイゼリヤは手頃な価格で本格的なイタリア料理を提供することで、多くの中国人が抱いていた「西洋料理は高い」という固定観念を打ち破った。これは「安くておいしい」という中国の食文化のトレンドにもマッチしていた。長岡氏は「われわれは高い利益を追求するのではなく、多くの人が毎日でも食べられる良質なイタリア料理を提供したいと考えている」と説明した。
原材料の調達では中国国内のサプライチェーンにこだわり、国内調達率は現在、約90%に達している。中でも鶏肉と野菜は全て国内で調達しているという。
3日、サイゼリヤの中国子会社の一つ、広州薩莉亜餐飲のオフィス。(広州=新華社記者/彭純)
中日経済・貿易協力の規模は今後も拡大
長年にわたり中国の市場に深く根を下ろしてきた外資系飲食企業の経営幹部として、長岡氏は中国進出を検討する日本の飲食企業への助言として「一番は値段。中国の人が『これならお金を出せる』と思える値段を見つける必要がある。品質に見合った値段で売ることが一番の問題だ」と強調した。
長岡氏は、中国市場の将来に強い自信を持っている。中国市場は非常に大きいがイタリア料理などの西洋料理はまだ十分に普及しておらず、また中国の人々も生活の質や便利さ、暮らしの快適さをより重視するようになり、事業展開にさらに大きなチャンスをもたらすと指摘。中国と日本の経済・貿易関係も飲食や小売りなどの分野で協力の規模が拡大し、両国のビジネス関係はますます緊密になるとの見方を示した。
サイゼリヤは現在、中国への投資を過去最高の水準で進めている。建設中の広州工場は2026年1月の竣工を予定し、完成後は千店舗のニーズに対応できる。自社メニューの原料を生産し、核心となるレシピ技術を保持しつつ、サプライチェーンの自主性と競争力を高めていく。同社は10年以内の千店舗超えを計画しており、約5年後には次の工場の建設も検討する必要もある。投資額は50億円を超えると見込んでいる。(記者/彭純、常博深、丁楽)
サイゼリヤが広東地区で打ち出した新メニュー「黄花魚(フウセイ)のムニエル」。(2024年11月7日撮影、広州=新華社記者/丁楽)
広東省広州市内のサイゼリヤで、入店を待つ人たち。(2024年11月7日撮影、広州=新華社記者/丁楽)
3日、サイゼリヤの中国子会社の一つ、広州薩莉亜餐飲のオフィス。(広州=新華社記者/常博深)