中国の「西夏陵」世界遺産決定 科学的保護の秘密を探る

中国の「西夏陵」世界遺産決定 科学的保護の秘密を探る

新華社 | 2025-07-15 10:44:00

表面の耐風化対策や排水処理が講じられた西夏陵5号陵南西角にある闕(けつ=門塔)跡。(銀川=新華社配信)

 【新華社銀川7月15日】中国寧夏回族自治区銀川市にある西夏時代(11~13世紀)の王墓群「西夏陵」では、1972年の最初の発掘調査で王陵であることが確認されてから、今年の世界文化遺産登録決定に至るまで、53年間にわたり研究保護活動が続けられてきた。半世紀におよぶ科学的、体系的な保護措置によって今もそそり立つ版築建造物(土を突き固めた建造物)は、中国の文化・自然遺産保護の実践を物語っている。

9日、銀川西夏陵区管理所の文物庫で、文化財を整理する職員。(銀川=新華社記者/楊植森)

 フランス・パリで6日から開かれている国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会は、西夏陵の登録決定にあたり、中国政府が同遺跡を保護するために払った多大な努力と大きな成果を高く評価。西夏陵保護の法体系や保護管理体制、土製建造物遺跡保護の実践と研究が、遺跡の完全性と真実性の保護を支えてきたと指摘した。

 西夏陵は、九つの皇帝陵と271の副葬墓、5ヘクタールの北側建築遺跡、32カ所の治水遺構を含む。現存する中で最大の規模、最高の格式を持ち、極めて保存状態の良い西夏時代の遺跡であり、200年近く続いた王朝とその君主の系譜を示すかけがえのない直接的証拠となっている。

9日、銀川西夏陵区管理所の文物庫で、文化財を整理する職員。(銀川=新華社記者/楊植森)

 西夏は1227年、モンゴル軍に滅ぼされ、歴史の舞台から姿を消した。西夏陵は700年以上にわたり風雨にさらされる中で沈黙を続け、侵食やさまざまな病害にも耐え続け、1972年に初めて存在が考古学的に確認された。

 1988年に第3次全国重点文物保護単位(国宝・重要文化財)の指定を受けると、保護範囲や保護計画、保護条例が相次ぎ定められ、西夏陵区管理所も設立。遺産の真実性と完全性を保護する法律法規や制度、管理体制を整えた。

 銀川市西夏陵区管理所の任秀芬(にん・しゅうふん)文物保護科長は、版築建造物の保護が世界的にも難しかったとし「最小限の干渉という原則に基づき、国内の技術がある程度成熟した2000年に敦煌研究院と協力し、本体の補強と表面の風化に対する耐性向上の二つの側面から西夏陵に適した保護方法を模索した」と述べた。

西夏陵で日常的な巡回保護を行う銀川西夏陵区管理所の職員。(銀川=新華社配信)

 壁の亀裂やひび割れ、比較的深刻な根元部分の浸食被害に対し、敦煌研究院は実際の状況に即してアンカーボルトによる固定や表面保護、総合処理などの技術を開発。同研究院の楊善竜(よう・ぜんりゅう)研究員は「60項目の補強工事を実施し、皇帝陵と主な副葬墓の不安定リスクと表面侵食の問題をほぼ解消した」と語った。

 任氏によると、モウソウチク製アンカーボルトによる補強や、遺跡の根元部分に鳥類やげっ歯類を寄せ付けないためのソーラー式音響妨害装置の設置など、新たな保護・補強措置も検討している。

 西夏陵では、遺跡の保護と補強に加え、先進的な予防的保護設備を導入して収蔵文化財の保存環境を改善し、有機質文化財に対しては被害評価と修復も実施した。

9日、西夏陵遺産モニタリング・警戒システムで、西夏陵をモニタリングする職員。(銀川=新華社記者/楊植森)

 2019年には、延床面積が9千平方メートルを超える新たな西夏陵博物館が開館。師培軼(し・ばいいつ)館長は「温度と湿度を一定に保てる貯蔵施設を増やし、有機質の収蔵文化財をより良い形で保護できるようにした」と紹介した。

 西夏陵の保護活動は現在、予防的保護の段階に入っている。新たなモニタリングセンターが遺跡本体や自然環境、日常管理、観光客の動向などを監視し「遺産の変化の監視、リスクの識別、危険の予防、持続可能な保護」が可能な管理体制を整えた。

 任氏は「これまでは高さ1・3メートル以上の副葬墓を本体保護の対象としていたが、今後は271基すべてを保護する。治水遺構も補強・保護措置を講じていく」と語った。(記者/艾福梅)

西夏陵3号陵に耐風化措置を施す職員。(銀川=新華社配信)

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