浙江省の平湖経済技術開発区にあるニデックの自動車部品工場、ニデック自動車モータ(浙江)の生産ライン。(6月20日撮影、平湖=新華社記者/単濤)
【新華社杭州7月11日】世界的な総合モーターメーカー、ニデック(本社:京都市南区)が中国事業を加速させている。1992年に遼寧省大連で初の生産拠点を設けて以降、整備されたサプライチェーンと地元政府の手厚い支援を追い風に、事業ネットワークを中国各地へと拡大してきた。現地パートナーとの連携を通じたイノベーションで、将来を見据えた基盤づくりを進めている。
なかでも中国戦略の要となっているのが、浙江省の平湖経済技術開発区だ。モーターや自動車部品、産業用ロボット用の減速機などを手がけるグループ企業17社が集結。工場の構内では物流ロボットが整然と行き交い、熟練作業員が部品の検査を黙々とこなす。現場には、同社の最新技術と高度な生産体制が集約されている。
こうした地域拠点を生かし、ニデックは中国全土での事業展開を進める。グループ全体で300社以上を有するなか、中国にはその3分の1に当たる102社が集中。売上高は全体の約20%を占めるまでに成長した。ニデックの最高業績管理責任者兼最高マーケティング責任者、髙橋亨氏は「中国はニデックにとって最大の市場だ」と語る。
オンラインで取材に応じるニデックの最高業績管理責任者兼最高マーケティング責任者の髙橋亨氏。(6月20日撮影、平湖=新華社配信)
▽「地営地開」「地産地消」で市場に密着
髙橋氏は、技術革新のスピードが非常に速く、新たな事業が次々と生まれる中国市場で競争力を保つには、「スピード」と「コスト」の両面が鍵を握ると強調する。こうした環境に対応するため、ニデックは中国で「地営地開(現地での営業・開発)」と「地産地消(現地での生産・販売)」の戦略を徹底。現地のニーズを素早く把握し、それに即した製品を迅速に提供する体制を構築している。
製品の品質とコスト競争力を両立させるためには、優良な現地サプライヤーの選定も欠かせない。髙橋氏によれば、中国で生産する製品は現地の原材料が使われ、研究開発も現地で行っている。さらに、選定したサプライヤーの工場にも積極的に関与し、製造工程や品質管理の改善を支援することで、製品全体の競争力向上を図っているという。
販売面では、中国の広大で多様な市場をカバーするため、直営と代理店を組み合わせたマーケティングモデルを採用。直営を主体とすることで、顧客への迅速なソリューション提供やアフターサービス充実を図る一方、地元の状況を熟知した各地の代理店との連携により、製品の全国展開を実現している。
浙江省の平湖経済技術開発区にあるニデックの自動車部品工場、ニデック自動車モータ(浙江)の倉庫エリアを行き交う無人運搬車。(6月20日撮影、平湖=新華社記者/単濤)
▽電動車からロボットまで 現地連携で技術革新を推進
ニデックは「回るもの動くもの」「熱マネジメント」「発電・蓄電・充電・変電」という三つの技術を核に、「モビリティイノベーション」「産業の効率化」「AI社会を支える」「サステイナブル・インフラとエネルギーの追求」「より良い生活の追求」の五つの重点分野に力を入れている。これらはいずれも、中国が掲げる製造業発展方針や環境政策と方向性が一致しており、髙橋氏は「需要の拡大によって、事業機会がどんどん広がっている」と手応えを語る。
急成長する電気自動車(EV)分野では、車の動力源となる「eアクスル(EV向け駆動装置)」の開発を強化。2019年には中国の大手自動車メーカー、広州汽車集団と合弁で「広州尼得科汽車駆動系統有限公司」を設立し、製品の共同開発と量産体制を整えてきた。
さらに、次世代製造で注目されるロボット関連分野では、中国市場の成長を見据え、サーボモーターや減速機といった中核部品の現地開発・製造を加速している。24年には平湖に33億円を追加投資し、中国初となる波動歯車減速機の生産ラインを立ち上げた。「中国企業と現地で手を組むことで、グループ全体の競争力も高まる」と髙橋氏。現地パートナーとの協業が、同社のイノベーションを支えている。
浙江省の平湖経済技術開発区にあるニデックの自動車部品工場、ニデック自動車モータ(浙江)で働く従業員。(6月20日撮影、平湖=新華社記者/単濤)
▽現地政府の手厚い支援も後押し
事業拡大の背景には、地元政府による積極的な企業誘致ときめ細かな支援策がある。平湖で中核を担うニデックモータ(浙江)の森田久美男副董事長兼総経理は「設立当初の建物提供から税制優遇、定期的なヒアリングまで、細やかな支援がありがたい」と話す。「道路がくぼんで水たまりができた」といった日常的な問題にも即座に対応する姿勢が、企業側の信頼につながっているという。
浙江省の平湖経済技術開発区で取材に応じるニデックモータ(浙江)の森田久美男副董事長兼総経理。(6月20日撮影、平湖=新華社記者/劉銘翔)
森田氏は1995年に初めて中国を訪れて以来、サプライチェーンや人材育成環境の飛躍的な進化を肌で感じてきた。今では多くの部品や設備を中国国内で調達できるようになり、「EVはもちろん、AIや半導体といった分野も、今後ますます成長していくだろう」と期待を寄せる。
髙橋氏も「最重要市場として中国への投資を今後も継続していく」とし、「事業の成長と同時に、社会の発展にも貢献していきたい」と、中国とのウィンウィンの関係構築に意欲を示した。(記者/単濤、楊珏、朱涵)