子育てと高齢者支援を両立 中国で広がる地域の新たな試み

子育てと高齢者支援を両立 中国で広がる地域の新たな試み

新華社 | 2025-07-10 11:44:30

 下校時間に社区の子供たちを迎えに行く内モンゴル自治区烏海市華苑社区の高齢者ボランティア。(烏海=新華社配信)

 【新華社北京7月10日】中国各地で、高齢者の社会参加と学童保育を結び付けた新たな地域福祉モデルが広がりつつある。研修を受けた健康な高齢者が共働き家庭の子どもの送迎や放課後の預かりなどを行うことで「見守りが必要な子ども」と「生きがいを求める高齢者」のニーズを両立させることができ、社区(コミュニティー)の運営に民間の力を活用する好事例となっている。

 「おばあちゃん、かばんを取ってくれる」「おばあちゃん、今日は工作を習ったよ」。内モンゴル自治区烏海市の華苑社区では、15人からなる「おばあちゃんチーム」が結成され、ボランティアとして子どもたちの送迎を交代で行っている。毎日の下校時間になるとユニホーム姿で校門前で待機し、子どもたちを社区の活動室に連れて行き、宿題や工作、書道の練習などの相手をしながら保護者が迎えに来るのを待つ。孫瑞芳(そん・ずいほう)さんは「自分の孫を迎えに行くとき、ご近所の子も一緒に預かるだけ。無理なく人助けができ、とてもうれしい」と語った。

 四川省成都市では、黄(こう)さんが社区の地域活動で忙しい日々を過ごしている。黄さんのメモには、毎日の予定がびっしりと書き込まれ、子どもを迎えに行く時間のない共働き家庭のための送迎・預かりサービスも含まれる。こうした活動に関わる「おばあちゃん」たちはみなボランティアで、報酬は受け取らないが「得るものの方が多い」と口をそろえる。社区の担当者は、高齢者にとって社会参加で得られる達成感はとても重要だと話す。

 下校時間に社区の子供たちを迎えに行く内モンゴル自治区オルドス市康新街道の高齢者ボランティア。(オルドス=新華社配信)

 この新たなモデルの登場で、共働き家庭には商業的な送迎・預かりサービスよりも温もりのある選択肢が生まれた。高齢者が地域サービスの担い手となることは「必要とされている」「尊重されている」という実感につながる。良好な仕組みによって社区を温もりのある心の共同体として築いていくことは、地域運営における知恵の生きた表れでもある。

 中国は世界最大規模の高齢者人口を抱えている。データによると、2024年末時点で60歳以上の高齢者は3億1千万人を超え、総人口の約22%を占める。高齢者にとって、ボランティア活動は社会参加の大切な手段の一つとされる。高齢者によるボランティア活動「銀齢行動」が開始以降、全国で延べ700万人以上の高齢者がボランティアに参加し、実施された支援プロジェクトは4千件を超え、延べ4億人以上が受益者となった。

 中国人口学会で副会長を務める原新(げん・しん)南開大学経済学院教授は、60歳から69歳までの初期高齢者は健康状態も良好で教育水準も高く、豊富な人生経験や知識、技能、資源を備えていると指摘。政策体系をさらに整備し、彼らの社会参加能力を高めることで、人口高齢化に積極的に対応し、意欲のある高齢者が引き続き社会で輝けるよう支援していくべきだと語った。(記者/沈氷潔)

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