6月26日、文化財史料寄贈式に出席した竹上勝利さん。(南京=新華社記者/蔣芳)
【新華社南京7月2日】中国侵略日本軍の細菌戦部隊「1644部隊」元隊員の息子、竹上勝利さん(77)がこのほど、江蘇省南京市の侵華日軍南京大屠殺遇難同胞紀念館に同部隊に関する史料を寄贈した。竹上さんは「私は専門の研究者ではない。部隊の真相を明らかにし、父が中国で何をしたのかを知りたかっただけだ」と語った。
6月26日に南京で行われた「日本の友人・竹上勝利氏による文化財史料寄贈式」では、1644部隊の留守名簿、第158兵站病院の留守名簿、竹上さんの父で同部隊の隊員だった宮下利市さんの兵籍簿の複製資料、中国侵略日本軍の行軍写真集の複写資料などが同紀念館に収蔵された。
6月26日、文化財史料寄贈式に出席した竹上勝利さん。(南京=新華社記者/蔣芳)
長野県から3日前に南京に到着した竹上さんが手にしていたのは歴史資料だけではなく、長い間明かされることのなかった家族の過去も含まれていた。竹上さんは数年前、古物を整理していた時に偶然、父のアルバムを数冊見つけた。そこには、中国侵略日本軍の陸軍防疫給水部が華東・華中地区で行った活動が記録されていた。竹上さんは父が1932年から3回、衛生兵などとして中国に渡り、1941年に1644部隊に転属したことを知った。
対外的には防疫としていたが、実際にはコレラや腸チフス、ペストなどの細菌を培養していた。これが南京に司令部を置く1644部隊の実態だった。
6月26日、侵華日軍南京大屠殺遇難同胞紀念館を見学する竹上勝利さん。(南京=新華社記者/蔣芳)
竹上さんは「生前は軍での経歴をほとんど語らなかった。学歴は高くなく、性格も温厚だった」と父を振り返った。写真に残虐な場面こそ写っていなかったが、佐藤大雄のような医学犯罪に関わったとされる人物が記録されていたことに、竹上さんは強い不安を覚えたという。「私の知る限り、父のように衛生兵から短期間で中尉へ昇進した人はあまりいない。だから、父自身が悪いことをしたのではないかと心配になった」と話した。
佐藤大雄は人体実験の「実行者」だった。南京大学歴史学院の呂晶(りょ・しょう)副教授は「中国侵略日本軍第四防疫給水部の部隊長、1644部隊第一科長、福岡陸軍病院院長などを歴任し、携わっていた鼻疽(びそ)菌の研究は細菌戦と密接に関係していた」と語った。
6月26日、文化財史料寄贈式に出席した竹上勝利さん(左)。(南京=新華社記者/蔣芳)
しかし、日本軍は戦後、書類を廃棄し、人体実験の犯罪行為を隠蔽(いんぺい)したため、1644部隊の悪行は長い間、人に知られることはなかった。だが、真実が闇に埋もれることはなく、追及の手が緩むこともなかった。
ここ数年、中国侵略日本軍の細菌戦に関する歴史研究は大きな進展を遂げている。侵華日軍南京大屠殺遇難同胞紀念館には、同部隊が行った細菌実験の犠牲者の遺骨や手術用ハサミ、部隊記章、歴史的写真などが収蔵されている。南京大学は今年6月、海外の研究者と8年かけて完成させた「抗日戦争時の細菌戦・防疫戦文献集」全11巻を出版。歴史の真相の復元に向け、より整った証拠体系を構築した。
6月26日、侵華日軍南京大屠殺遇難同胞紀念館に収蔵されている1644部隊の写真。(南京=新華社記者/蔣芳)
竹上さんは南京到着後、同紀念館の協力の下、史料展を見学した。展示写真を丹念に見て回り、細菌戦研究の学者らと交流したほか、南京大虐殺の生存者の子孫とも対話し、歴史と犯罪に対する理解を深めた。
細菌実験犠牲者の遺骨の前では足を止め、白骨の山に見入った。1998年に市内の建設現場で見つかった41体分の頭蓋骨と大量の肢骨で、竹上さんは「彼らの犠牲に胸が痛む」と語った。
中国侵略日本軍第四防疫給水部の部隊長で後に1644部隊第一科長となった佐藤大雄。(南京=新華社配信)
南京大虐殺の生存者、夏淑琴(か・しゅくきん)さんの孫である夏媛(か・えん)さんとの対話では、夏淑琴さんが日本の右翼勢力からの虚偽の訴えに反訴して勝訴した経緯や、夏さん一家が数世代にわたって歴史の真実を探求し、広めるために尽力してきたことを聞いて感銘を受け、夏媛さんに深々と頭を下げた。
同紀念館の周峰(しゅう・ほう)館長は「歴史の真実は抹消しようとしても消し去ることはできない」と指摘。竹上さんの寄贈史料は、同館の収蔵品を一層充実させ、中国侵略日本軍による細菌戦犯罪の研究に新たな証拠となるだけでなく、より多くの人々が歴史の真実を追求し、歴史の尊厳を守るための励みになると語った。(記者/蔣芳、郭丹)
竹上勝利さんが侵華日軍南京大屠殺遇難同胞紀念館に寄贈した第158兵站病院の留守名簿。(南京=新華社配信)
6月26日、文化財史料寄贈式に出席した竹上勝利さん。(南京=新華社記者/蔣芳)