哺乳類の胚における初期器官発達の謎、中国の研究者が解明

哺乳類の胚における初期器官発達の謎、中国の研究者が解明

新華社 | 2025-06-27 14:14:00

東南大学研究チームが構築したマウスの3Dデジタル胚。(南京=新華社配信)

 【新華社南京6月27日】中国の科学者がこのほど、哺乳類の胚の初期発達段階に器官原基決定領域が存在することを発見し、先天性心疾患などの先天異常の予防・治療や、再生医療研究に重要な理論的基礎をもたらした。先天性心疾患は、新生児に最もよく見られる先天異常の一種とされる。研究成果は国際学術誌「セル」のオンライン版で発表された。

 哺乳類の初期胚における細胞群は、心臓や肺、肝臓などの器官の形成を決定し、その発達メカニズムは生命科学分野における重要な研究方向となっている。器官の発達異常の深層的な原因を探るため、江蘇省南京市にある東南大学生命科学・技術学院の林承棋(りん・しょうき)教授が率いる研究チームは、マウス胚の単一細胞空間オミックス解析を行うことで、器官形成の動的なプロセスを捉えた。

 林氏は空間オミックス解析について「あたかも細胞一つ一つにGPS測位システムを搭載させ、空間位置情報と遺伝子発現の特徴を記録するようなもの」と説明。この研究では6年の時間を費やしてマウスの後期原腸形成期から心臓などの器官原基形成期までをカバーする、単一細胞レベルの精度を持つ3Dデジタル胚を複数構築し、累計10万個を超える細胞の遺伝子発現情報を解析したと紹介した。

 研究では、マウス胚の発生7・75日目に、胚内と胚外の境界に独特なシグナルである「くぼみ」、すなわち器官原基決定領域(PDZ)が出現し、PDZに隣接する胚内部分と胚外部分はそれぞれ高濃度のシグナル抑制分子と活性化リガンド分子を示す一方、PDZ内では低シグナル活性の「くぼみ」を呈し、多様な受容体シグナル遺伝子を発現することを発見。これにより、多胚層シグナル制御入力を受け入れやすく、心臓や前腸などの器官原基の協調的な発達を促進する微小環境が形成され、この微小環境シグナルが遺伝子選択的発現の指令に変換された後、心臓などの器官原基の形成を促進することを突き止めた。

 「セル」の査読者は、この研究が単一細胞レベルの精度で器官原基形成の時空間的ダイナミクスを初めて明らかにし、先天性心疾患などの先天異常や関連疾患の予防・治療に対してより正確な科学的根拠をもたらすと指摘。また器官再生や腫瘍発生などの重要な科学的課題の理解においても、全く新しい方法論を学術界に提供したと評価している。(記者/柯高陽)

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