17日、新華網でインタビューに応じる三得利(中国)投資の大塚徳明董事長。(北京=新華社配信/李江)
【新華社北京6月26日】中国事業に41年前から取り組んできたサントリーが、現地消費者の好みに応じた製品開発を加速している。サントリーの中国法人、三得利(中国)投資の董事長を務める大塚徳明氏は新華網のインタビューに対し、「2025年は中国で投入する新製品が過去最多となる可能性がある」と述べ、いずれも中国市場での調査と現地ニーズに即した開発の成果であると強調した。
半世紀以上前にさかのぼる中国との縁
サントリーと中国との縁は、中日国交正常化前年の1971年にさかのぼる。中国との友好を重視していた2代目社長の佐治敬三氏が「私たちが先陣を切って日中の経済・文化交流の道を開くべきだ」と関西財界訪中団の一員として中国を訪問。「この訪中がサントリーと中国の友好関係の始まりを示す重要なマイルストーンになった」(大塚氏)。1984年には中国市場への投資を正式に開始し、中国に最も早く進出した日本企業の一つとなった。
中国との関係は、事業面にも色濃く反映されている。サントリーが1981年に発売した「サントリー烏龍茶」は、同社が福建省武夷山の茶葉を用いて開発したものだ。当時はペットボトルや缶入りのお茶飲料がほとんどなく、無糖茶になじみのない日本市場で新たなお茶文化を提案する取り組みだった。中国茶文化の本場を訪ね、現地の半発酵茶が持つ豊かな香りとすっきりした後味に着目。抽出法や風味の保持に工夫を重ねることで、まったく新しい飲料として商品化にこぎつけた。
その後、サントリーは日本国内で高まる健康志向を背景に、無糖茶の市場拡大を見据えた展開を進めた。同様の変化は中国にも訪れると見て、1997年には現地でもボトル入り烏龍茶の販売を開始。生活水準の向上にともなって健康意識が高まり、無糖茶の需要は着実に伸びていった。現在では、中国各地のコンビニで扱われる定番商品となり、一定の市場シェアを確保している。「中国経済の発展がもたらした機会を捉え、中国の飲料市場とともに成長してきた意義は大きい」と大塚氏は語る。
17日、新華網でインタビューに応じる三得利(中国)投資の大塚徳明董事長。(北京=新華社配信/李江)
最先端市場に応える現地発の挑戦
「中国は急速な発展を遂げた活力のある市場であると同時に、イノベーションの最先端市場の一つでもある」。大塚氏は、飲料に求められる価値が「のどを潤す」ことから、機能性やライフスタイル提案へと広がっていることを実感している。スポーツ時には電解質飲料、脂っこい料理にはすっきり系飲料が好まれるなど、用途に応じた選択が定着しているほか、中国伝統の生薬を取り入れた健康飲料や、果汁と茶を組み合わせた「ジュースティー」も人気を集めている。
中国飲料市場の参入者が増加し、競争が激化する中、サントリーは現地の多様なニーズに応じた製品開発を加速している。すでにウーロン茶とジャスミンやオレンジピール、キンモクセイなどを組み合わせた新しいフレーバーの無糖茶製品を開発。さらに中国の食事療法や伝統医学からインスピレーションを得た新たな健康飲料ブランド「三得利煥方」も展開している。いずれも中国市場で重ねた調査と開発の成果であり、日本市場にはない中国発のイノベーションだ。
17日、新華網でインタビューに応じる三得利(中国)投資の大塚徳明董事長。(北京=新華社配信/李江)
「やってみなはれ」で変化をチャンスに
中国では科学技術の進歩とともに、市場が急速に変化している。大塚氏は「中国の電子商取引(EC)は従来型だけでなく、ショート動画などで購買行動を促す『インタレストコマース』、即時配達などを代表とする『O2O(オンライン・トゥ・オフライン)』まで立体的に進化しており、世界にも類を見ない」と指摘。サントリーはすでにこうしたデジタル形態を積極的に導入しているという。
中国市場に深く根を下ろして41年。大塚氏は「変化の激しい中国市場だからこそ、現地に根差したイノベーションが求められる」と強調する。消費者の価値観が日々移り変わるなか、サントリーは試行錯誤を重ねながら変化に向き合ってきた。創業精神「やってみなはれ」に通じる柔軟さと粘り強さが、中国市場での取り組みにも生きているという。(記者/方芸暁、銭琪瑩)