大阪で行われたポータルサイト「起点国際」とカルチュア・コンビニエンス・クラブなどが共同で創設した小説投稿コンテスト「ノベルフォーミュラ日本GP」の発表式。(5月7日撮影、大阪=新華社記者/胡暁格)
【新華社大阪6月20日】中国電子書籍大手の閲文集団(チャイナ・リテラチャー)傘下の海外版ポータルサイト「起点国際」(WebNobel)と日本カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)などが、IP(知的財産)を活用した新たなビジネス展開に向け共同で創設した小説投稿コンテスト「ノベルフォーミュラ日本GP」の発表会がこのほど、大阪で行われた。日本の読者代表としてゲスト登壇した竹内光さんが新華社のインタビューに応じ「中国のネット小説のIP展開は今後日本市場にさらに大きな影響を与えるだろう」と語った。
アニメ脚本家で演出家の竹内光さんは趣味で中国のネット小説「天啓予報」の翻訳をしている。「翻訳は最も重要なストレス解消の手段で、一章翻訳するたびに充実感が増す」と話し、より多くの日本の読者に中国ネット文学の魅力を感じてもらうことが最大の幸せと、中国ネット小説への思い入れを語った。
大阪で行われたポータルサイト「起点国際」とカルチュア・コンビニエンス・クラブなどが共同で創設した小説投稿コンテスト「ノベルフォーミュラ日本GP」の発表式であいさつする竹内光さん(奥中央)。(5月7日撮影、大阪=新華社記者/胡暁格)
「天啓予報」とは仕事を通じて偶然出合った。学生時代に中国古典文学を専攻していた竹内さんだが、当初はネット文学についてはよく知らなかったという。ネット文学という新たな世界が開けた竹内さんは、作品の愛読者となった。「作品に描かれた立体的な人物像に深く魅了され、主人公の葛藤や喜びなど複雑で豊かな感情にも心から共感した」。
竹内さんは「日本では今でも現金決済が主流だが、主人公がタクシー代をスマホで払うようなそういう中国人の生活が小説を通していろいろ分かるところが面白い」と言い、日本の読者にとって、中国のネット文学作品は中国の社会や文化の変化を観察する重要な窓口だと語った。
作品が完結すると竹内さんは、作者の風月(ふうげつ、ペンネーム)さんにファンレターを出した。「天啓予報は私が初めて読んだ中国のネット文学でした。偶然見つけて読み始めたこの作品は、文章が美しく、リズム感もあり、時間を忘れて読みふけりました」とつづり、そこから竹内さんと中国ネット文学は深い絆で結ばれた。
大阪で行われたポータルサイト「起点国際」とカルチュア・コンビニエンス・クラブなどが共同で創設した小説投稿コンテスト「ノベルフォーミュラ日本GP」の発表式。(5月7日撮影、大阪=新華社記者/胡暁格)
竹内さんは現在、「忠実な読者」を超えて中国ネット文学作品の翻訳者・紹介者となっている。この3年間で作者の許可を得て「天啓予報」全1600章のうち200章以上を日本語に翻訳し、同人誌を制作し周りの友人たちに共有してきた。竹内さんは「作品全体の8分の1しか翻訳できておらず、一部の若者言葉は訳すのに苦労するが、それでも翻訳を続けたい」と意気込む。
中国ネット文学の海外展開が加速するにつれ、ますます多くの海外の読者が単なる読者からクリエーター、翻訳者、さらにはIPの共同クリエーターへと変化を遂げている。竹内さんも「ノベルフォーミュラ日本GP」への応募を検討しているという。
「天啓予報」のように、日本でも人気を集める中国のネット文学作品は少なくない。ここ数年、「慶余年~麒麟児、現る~」(原題:慶余年)「マスターオブスキル 全職高手」(原題:全職高手)「蒼穹の剣」(原題:斗破蒼穹)などの作品がローカライズ出版、コミック改編、アニメ放送の形で日本市場へ参入、多くの人の心をつかみ、熱心なファンを生み出している。日本語版の小説「マスターオブスキル 全職高手」は3千万回以上ダウンロードされ、アニメ映画「マスターオブスキルFor the GLORY」は日本やフィリピン、シンガポールなど9カ国・地域で公開された。漫画版は日本の漫画配信アプリ「ピッコマ」で長く人気ランキングの上位にとどまり、作品の評価基準となる「ハート(いいね)」を累計で800万近く獲得している。これらの成功事例は、中国ネット文学というIPが日本市場に根付き、成長していることを示しており、中国ネット文学産業チェーンの加速するグローバル化プロセスの縮図と言える。
大阪で行われたポータルサイト「起点国際」とカルチュア・コンビニエンス・クラブなどが共同で創設した小説投稿コンテスト「ノベルフォーミュラ日本GP」の発表式。(5月7日撮影、大阪=新華社記者/胡暁格)
竹内さんは、中国のネット小説の映画やテレビドラマ、アニメ、漫画などへのIP展開が続くにつれて、日本市場への影響はさらに広がっていくとみている。
中国のネット文学は今、世界で急速に影響力を高めている。閲文集団の最新データによると、2024年末時点でポータルサイト「起点国際」は、中国ネット文学の翻訳作品を約6800本配信し、海外のネット小説家46万人を育成、海外のオリジナル作品も約70万本配信している。累計訪問者数は約3億人、世界200以上の国・地域に広がっている。中でも日本市場は活況を呈しており、24年にはユーザー数の伸び率が2・8倍となった。
小説投稿コンテスト「ノベルフォーミュラ日本GP」創設発表式であいさつするCCCの鎌浦慎一郎執行役員。(5月7日撮影、大阪=新華社記者/胡暁格)
日本CCCグループの鎌浦慎一郎執行役員は、中国企業との協力を強化し、日中文化交流の新たなIP事業を共に創造することを楽しみにしていると強調。両国共通の文化的要素と価値観を融合し、そこにさまざまな日本の作家やクリエーターの力を集め、素晴らしいコンテンツをかけ合わせることによって、新たなクリエーティブ作品を育てていきたいとの考えを示した。
閲文集団の侯暁楠(こう・ぎょうなん)最高経営責任者(CEO)兼総裁は、ネット文学はコンテンツやモデルの輸出から「IPの世界的な共同創造」という新たな段階に移行したと指摘。中国三国時代の文化など伝統的な文化IPは中日両国共通の文化的絆となっており、ローカライズを経ることで真の意味で中国文化の海外展開を実現できると語った。(記者/胡暁格、馮翀)
小説投稿コンテスト「ノベルフォーミュラ日本GP」創設発表式であいさつする閲文集団広報担当副総裁の王晨(おう・しん)氏。(5月7日撮影、大阪=新華社記者/胡暁格)