内モンゴル自治区フフホト市玉泉区の大召歴史文化観光区にある大盛魁博物館群の入り口。(資料写真、フフホト=新華社配信)
【新華社フフホト6月18日】ユーラシア大陸では300年余り以前、当時の中国を代表する大商号(商業組織)「大盛魁」のラクダ2万頭が茶葉などの貨物を満載して長蛇の列をなし、古代の長距離貿易ルート「万里の茶道」を西へとゆっくり進んでいた。
時は流れ、古道に響くラクダの鈴の音はかなたに消えていったが、内モンゴル自治区フフホト市玉泉区にある大召歴史文化観光区の大盛魁博物館群では、壮大な歴史が新たな形で再現されており、中を行き来しながら万里の茶道の繁栄ぶりを没入体感できるようになっている。
同博物館群は、当時の大盛魁の様子と万里の茶道の文化的脈絡に基づいて建設された。馬頭琴博物館や永盛貨幣博物館、茶博物館、大盛魁文化博物館などの展示施設からなり、文化財2千点余りが万里の茶道における商取引の物語を語り継いでいる。
内モンゴル自治区フフホト市玉泉区の大召歴史文化観光区にある大盛魁博物館群。(資料写真、フフホト=新華社配信)
17世紀末に中国・ロシア間の茶葉貿易が盛んになる中、南は中国福建省の武夷山から北はロシア・サンクトペテルブルクまで約1万3千キロの万里の茶道が、シルクロードに続き、ユーラシア大陸を横断するもう一つの国際商業ルートとなった。大盛魁に代表される晋商(山西商人)は南方から茶葉や各種商品を仕入れ、ラクダを輸送手段として、中国と北方の隣国を結ぶ商取引や文化交流を担っていた。
「大盛魁」は今やフフホト市の重要な文化的ランドマークとなり、舞台公演や漢服体験、庭園散策と花見、無形文化遺産体験などのイベントが多くの観光客を呼び込んでいる。また、園内の「非遺巷(無形文化遺産小路)」には点心(軽食)や古陶磁器の修復、革細工、銀細工などの手工芸ショップ十数店が軒を連ねる。
大盛魁博物館群の「非遺巷(無形文化遺産小路)」を散策する観光客。(資料写真、フフホト=新華社配信)
大盛魁博物館群はまた、文化を「生きたもの」にする取り組みにも注力している。永盛貨幣博物館はこのほど、子どもたち300人を対象に「古銭と天文学の出会い」「清明節の香り袋作り」などの催しを行い、貨幣を重要な鍵として科学や民俗、無形文化遺産をつなぐ多様性ある体験を提供した。博物館群の責任者、王鶴(おう・かく)さんは「従来の展示スタイルを打ち破り、静的な展示と没入体験を組み合わせることで、無形文化遺産の継承と文化観光産業の深い融合を試み続けている」と語った。
博物館群は昨年、内モンゴル自治区の研究学習旅行拠点およびフフホト市の科学普及教育拠点に認定され、「万里の茶道」や「磁器探訪記」「貨幣が語る中国の繁栄」「民族大融合」をテーマとする研究学習活動が広く好評を博している。活動は昨年からすでに180回近く開催されており、自治区内や北京市、山西省などから研究学習に訪れた児童、生徒、学生は延べ約1万8千人に上る。(記者/王雪氷)