3日、中国科学院脳科学・知能技術卓越イノベーションセンターのマイクロナノ電子加工プラットフォーム実験室で作業する研究者。(上海=新華社記者/方喆)
【新華社上海6月17日】中国科学院脳科学・知能技術卓越イノベーションセンターはこのほど、復旦大学付属華山医院や関連企業と共同で、侵襲型ブレイン・マシン・インターフェース(脳と機械を直接接続する技術、BMI)の前向き臨床研究を実施した。中国は侵襲型BMIで米国に次ぐ世界で2番目に臨床試験実施国となった。
被験者は高圧電力の事故で四肢を切断した男性で、3月にBMIデバイスを埋め込んで以降、システムは安定して稼働しており、術後も感染や電極の不具合は起きていない。2、3週間の訓練でBMIシステムを介して中国象棋(シャンチー)やレーシングゲームができるようになり、一般の人がパソコンのタッチパッドを操作するのと同程度のレベルに達した。
BMIはデバイスと大脳組織の接触度により侵襲型、半侵襲型、非侵襲型に分類され、うち侵襲型は収集する信号の質が最も優れる一方で、難易度も高い。
3日、中国科学院脳科学・知能技術卓越イノベーションセンターのマイクロナノ電子加工プラットフォーム実験室で作業する研究者。(上海=新華社記者/方喆)
同センターの趙鄭拓(ちょう・ていたく)研究員のチームと李雪(り・せつ)研究員のチームが開発したBMIシステムは、コインほどの大きさの脳インプラントとクモの糸のように細い電極2本からなり、インプラントに接続された電極の太さは髪の毛の約100分の1、インプラントの直径は26ミリ、厚さは6ミリ未満となる。
システムの埋め込みは頭蓋骨を貫通する必要はなく、大脳運動皮質上部の頭蓋骨にコイン大のくぼみを作ってデバイスをはめ込み、くぼみに5ミリの穿刺孔を開ける。
華山医院のチームは、術前に脳機能イメージング技術を用いて被験者の大脳運動皮質の詳細な機能マップを作成。手術時には高精度ナビゲーションシステムを駆使して電極を正確に埋め込んだ。
3日、中国科学院脳科学・知能技術卓越イノベーションセンターのマイクロナノ電子加工プラットフォーム実験室で作業する研究者。(上海=新華社記者/方喆)
リアルタイムのオンラインデコーディングはBMI技術の重要要素となる。趙研究員は、脳の神経信号をリアルタイムで解析できるオンライン学習フレームワークを開発し、神経デコーダーの動的最適化を実現したと説明。十数ミリ秒のごく短い処理時間内に神経信号の特徴抽出や運動意図の解析、制御指令の生成を完了できようにしたと述べた。
プロジェクトチームは次の段階として、被験者の義手使用を試みる予定で、今後はロボット犬やエンボディドAI(身体性を持つ人工知能)ロボットなど複雑な外部デバイスの制御にも取り組んでいくとしている。(記者/董雪、張泉)
3日、中国科学院脳科学・知能技術卓越イノベーションセンターのマイクロナノ電子加工プラットフォーム実験室で作業する研究者。(上海=新華社記者/方喆)
上海の自宅で、BMIを通してレーシングゲームをする被験者。(4月30日撮影、上海=新華社配信/戴焱淼)
復旦大学付属華山医院で、同僚と被験者の術前計画を立てる趙鄭拓(ちょう・ていたく)研究員(中央)。(3月22日撮影、上海=新華社配信/陳垚旭)
復旦大学付属華山医院で、記念撮影する中国科学院脳科学・知能技術卓越イノベーションセンター、同医院、関連企業のチーム。(3月25日撮影、上海=新華社配信/陳傑)
中国科学院脳科学・知能技術卓越イノベーションセンターが開発した侵襲型BMIインプラント。(3月22日撮影、上海=新華社配信/陳垚旭)
復旦大学付属華山医院の手術室で最初の臨床試験被験者に手術を行う医師。(3月25日撮影、上海=新華社配信/陳傑)