5日、山東省済南市で開かれた同省の先史時代考古学研究に関する重大成果発表会。(済南=新華社記者/李賀)
【新華社済南6月13日】中国の科学者が、山東省東営市広饒(こうじょう)県の傅家(ふか)遺跡で、4750年前に二つの母系氏族からなる社会形態が存在していたことを確認した。先史時代に母系社会組織が存在したことを実証した世界初の事例であり、最古の母系社会は欧州の鉄器時代までしかさかのぼれないという従来の遺伝学的通説を大きく覆す発見となった。
今回の研究は北京大学や山東省文物考古研究院などが共同で行い、分子遺伝学の証拠に基づき中国新石器時代の母系社会の具体的構造を初めて実証。論文は国際学術誌「ネイチャー」に掲載された。
発掘調査で出土した彫像や女性用品、および民族誌や文献記録に基づく従来の仮説と異なり、研究チームは古DNAを用いた高解像度の血縁関係鑑定技術に基づき、考古学や人類学、安定同位体、放射性炭素年代測定法などの学際研究を総合して今回の結論を導きだした。
5日、山東省済南市で開かれた同省の先史時代考古学研究に関する重大成果発表会。(済南=新華社記者/李賀)
北京大学考古文博学院の張海(ちょう・かい)研究員は、今回の研究では新石器時代の黄河下流沿海地域における母系氏族社会の組織特性、人口規模、生業モデル、生産力水準など重要な情報が得られたと説明。「人類の初期社会組織の研究を大きく進展させた」と述べた。
傅家遺跡は、山東省北部の山沿い地域と渤海湾南岸にまたがる大汶口(だいぶんこう)文化後期の遺跡で、年代は約4750年前から4500年前。遺跡は明確な空間区分があり、南北の二つの区域にそれぞれ独立した墓群が存在する。
墓地には1~3親等までの血縁関係を持つ集団が複数存在し、異なる墓地に埋葬された2親等の個体の存在が「母系に従って埋葬される」という葬送習慣を裏付ける直接的な遺伝学的証拠となった。同一墓地および墓地間には4~6親等にあたる親族関係が密に形成されており、二つの墓地に葬られた人々が長期間にわたり婚姻関係を持ち、共存していたことも分かった。母系埋葬の制度は、時の経過や血縁の希薄化を経ても変わることなく、少なくとも250年にわたり厳格に守られてきた。
ミトコンドリアDNAは母親からのみ受け継がれるが、傅家遺跡の墓に埋葬された人々は同じミトコンドリアDNAを持っていた。北京大学生物医学パイオニアリング・イノベーションセンターの黄岩誼(こう・がんぎ)研究員は「このような単一の母系遺伝モデルは、二つの墓区に埋葬された人々がそれぞれ異なる単一の母系祖先から派生したことを強く示唆している」と述べた。
5日、山東省済南市で開かれた同省の先史時代考古学研究に関する重大成果発表会で、傅家遺跡での発見について説明する山東省文物考古研究院の孫波(そん・は)院長。(済南=新華社記者/李賀)
研究者らは、墓地の規模や存続期間、母系のハプロタイプ(遺伝的系統を示す塩基配列の型)の完全な単一性、父系のハプロタイプの高度な多様性を総合的に考察し、傅家の二つの墓地が家族単位ではなく、母系氏族社会構造に属していると推測した。
自然人類学的分析の結果、青少年と成人男性はいずれも出生時に属していた氏族の墓地に厳格に埋葬されていることが分かった。この埋葬制度は母系社会の典型的な特徴に合致しており、女性が夫の墓に埋葬される父系社会の習俗と明確な対比をなしている。
山東省文物考古研究院の孫波(そん・は)院長は今回の発見について、モルガンとエンゲルスの母系制社会に関する理論の東洋における直接的な実証として、人類の文明起源の研究で大きな意義を持つと語った。(記者/邵琨)