実験を行うイノベーションチームのメンバー。(杭州=新華社配信/陳麗萍)
【新華社杭州6月11日】中国の企業と大学のイノベーションチームがこのほど、太陽電池材料であるペロブスカイトについて、平方メートル級モジュールの安定的な量産を実現する革新的コーティング技術を提案し、ペロブスカイト技術の研究室レベルから産業化への飛躍を促進した。研究成果は国際学術誌サイエンスに掲載された。
論文の筆頭著者・責任著者で杭州繊納光電科技の最高技術責任者、顔歩一(がん・ほいつ)氏は、ペロブスカイト太陽電池は第3世代の太陽光発電技術で、柔軟、軽量などの特性があり、曇天でも比較的安定した光電変換効率を維持できると指摘。ペロブスカイト電池の核心部分は光吸収層であるペロブスカイト層で、主にペロブスカイト溶液の成膜と結晶化によって製造されるが、これまでの一般的なプロセスでは結晶を平らで均一な厚みに制御するのが難しく、ペロブスカイト太陽電池の発電効率に影響を与えていた。
浙江大学、浙江理工大学による効率向上戦略と理論計算の支援の下、イノベーションチームは3次元層流場技術を提案、ペロブスカイト薄膜の大面積結晶の均一性の難題を克服した。
浙江省麗水市にある農業・太陽光発電相互補完型ペロブスカイト太陽光発電所。(杭州=新華社配信/陳麗萍)
顔氏は「3次元層流場技術は、スピンコーティングと真空フラッシュ蒸着を巧みに組み合わせることで、気流を安定して均一で、指向性を持ってガラス基板上に流して乾燥させるので、ペロブスカイトがより均一に結晶化する」と述べ、数値流体力学シミュレーションによる最適化を通じて、同技術は、ペロブスカイト薄膜の厚さを正確に制御、0・79平方メートルのペロブスカイト薄膜の厚さの変動を3ミクロン未満に抑えることを実現したと説明した。
従来のプロセスと比較して同技術は、表面の欠陥を減らし結晶形態を最適化して、残留溶剤を90%削減した。屋外での実証試験による推定では、新技術を適用したペロブスカイトモジュールの劣化率は10年間で10%以下となり、太陽光発電モジュールの耐用寿命要件を満たした。
このほか、同技術に基づいて建設された100メガワット級のペロブスカイト量産ラインでは、モジュールの歩留まり率が98・5%を超え、0・79平方メートルモジュールの出力は118ワットに達した。この基盤の上に建設された500キロワット級ペロブスカイト商用発電所では、単位設備容量当たりの等価ピーク継続時間は結晶シリコンモジュールより29%長く、高温期の発電量は31・9%多い。(記者/朱涵)