15日、島津儀器(蘇州)でインタビューに応じる河村政宏総経理。(蘇州=新華社記者/方芸暁)
【新華社蘇州5月29日】精密機械大手の島津製作所が中国・蘇州に構える拠点、島津儀器(蘇州)が、グローバル戦略の要として存在感を増している。2024年に建てられた最新の第4期工場では、ロボットや無人搬送車が稼働し、精密機器の製造が高精度かつ効率的に進む。1998年の拠点設立から四半世紀を経て、蘇州は島津にとって世界で最も重要な生産拠点の一つとなった。
中国事業は島津の売り上げの3割弱を占め、最大の海外市場となっている。中国各地に14カ所の販売・生産・開発ネットワークを築いており、そのうち蘇州は最大の生産拠点だ。島津儀器(蘇州)の河村政宏総経理は「上海に近く、販売拠点と連絡が取りやすいことに加え、地元政府の支援体制やサプライヤーの集積が大きなメリットだった」と語る。
15日、島津儀器(蘇州)第4期工場の内部。(蘇州=新華社記者/方芸暁)
▽現地化がイノベーションを促進
島津は11年、上海に中国開発センター(RDC)を設立した。販売・サービス部門が収集した顧客のニーズに応えた製品を開発し、生産できる体制を構築したことが、同社の中国展開の強みになっているという。例えば主力製品の一つである分析装置では、サンプルのセッティングを効率化したいという要望を受け、日本にもないアタッチメントの自動化に取り組んでいる。
中国ではバイオ医薬品などの先端産業が急速に発展する中、微量サンプルの測定やがんの発見などに使われる高度な分析装置の需要が高まっている。島津は22年から、それまで日本で製造して中国に輸出していた質量分析計(MS)の生産を蘇州の新工場で開始した。「中国の医薬品市場はすでに世界最大で、市場のニーズに迅速に対応するには現地で生産する必要がある」と河村氏は話す。
15日、島津儀器(蘇州)の外観。(蘇州=新華社記者/方芸暁)
▽行政との連携で「1年完成」実現
中国事業の発展にもう一つ大きな役割を果たしてきたのが、政府との協調だ。蘇州第4期工場の建設時には、蘇州ハイテク産業開発区(蘇州高新区)政府に許認可面で手厚いサポートを受けた。通常なら2~3年かかる建設を1年で完了し、市場のニーズにタイミング良く応えることができたという。河村氏は「地元政府の皆さんと普段から関係を保ち、情報を得ることで、事業を展開することができている」と語る。
外資にとっての中国のビジネス環境がますます改善していることも、島津製作所の中国展開を後押ししている。昨年末には短期滞在ビザ免除の再開で、人員の往来が円滑化した。本社の社長や幹部が蘇州工場を訪れたことをきっかけに、「島津製作所で自動化や効率化が一番進んでいる」と新工場を見学に来る社員も増えたという。
15日、島津儀器(蘇州)第4期工場で、生産ラインを紹介する河村政宏総経理。 (蘇州=新華社記者/常博深)
▽「政策×市場」が生む成長エンジン
河村氏は、中国では政府の方針がすばやく反映される傾向があり、「市場のわかりやすさ」になっていると同時にメーカーにとっては「スピード感」が求められると感じている。「『第14次5カ年規画(21~25年)』でヘルスケアや環境保護などの目標が定められたことで、売れる製品が大きく変わった」。今年は医薬品規格「中国薬典」の改訂の年で、同社も対応に取り組んでいるという。
中国で脱炭素に向けた歩みが加速していることも、島津の中国事業を大きく変化させつつある。かつて蘇州工場の主力だった汚染水や排ガス向けの測定機器は、環境改善とともに需要が大きく縮小。現在は電気自動車(EV)や水素エネルギーなどで使われる設備の必要性が高まっている。「『人と地球の健康』を守るという経営理念を掲げる島津製作所が得意とするところでもあり、スピード感をもって推進していきたい」
河村氏が12年に初めて蘇州に赴任した際、マンションや工場が次々と建ち上がっていく光景に、地域の活力を肌で感じたという。それから10年以上がたち、島津製作所にとって蘇州は、単なる海外生産拠点を超え、成長市場に応じて製品群を進化させる重要な拠点へと変貌した。第4期工場が稼働してまだ半年だが、次の発展構想もすでに練られており、グローバルな生産体制の一翼を担う拠点として、さらなる進化が期待されている。(記者/方芸暁、常博深、陳聖煒)
15日、島津儀器(蘇州)第4期工場で働く従業員。(蘇州=新華社記者/常博深)
15日、島津儀器(蘇州)第4期工場で働く従業員。(蘇州=新華社記者/方芸暁)
15日、島津儀器(蘇州)第4期工場での作業の様子。(蘇州=新華社記者/陳聖煒)
15日、島津儀器(蘇州)第4期工場の内部。(蘇州=新華社記者/陳聖煒)