8日、成都イトーヨーカ堂双楠店で取材に応じる山本義岳・董事兼リーシング部部長。(成都=新華社記者/単濤)
【新華社成都5月21日】イトーヨーカ堂が中国四川省で展開する成都伊藤洋華堂は今年、成都での1号店開業から28年目を迎えた。創業以来、「お客さま第一」の経営理念を掲げ、昨年は四川省内8店舗で年間約40億元(1元=約20円)の売り上げを達成。質の高い商品やサービスで消費者の支持を得るとともに、地域経済との連携も強化し、中国市場に確実に根を下ろしている。
▽「顔が見える」品質管理で信頼醸成
成都市中心部の「双楠店」の食品売り場は平日午前から活気にあふれ、レジには行列ができていた。旬の食材をたっぷり買い込んだ常連客の女性は「ここは品質が高く、安心して購入できる」と満足そうに話す。
8日、成都イトーヨーカ堂双楠店の吹き抜けの店内。(成都=新華社記者/単濤)
「信頼を得るため、清潔な売り場の維持や鮮度管理といった『当たり前』を積み重ねてきた」と山本義岳・董事兼リーシング部部長は語る。品質管理では、農産物を中心としたプライベートブランド「看得見的放心(顔が見える)」シリーズを展開。直接契約した現地の農家から仕入れ、生産地から店頭までの追跡が可能なトレーサビリティーシステムを導入した。消費者は商品のQRコードを読み取れば、生産者のメッセージや農園の様子をすぐ確認できる仕組みだ。
8日、成都イトーヨーカ堂双楠店の食品売り場で商品をチェックする山本義岳・董事兼リーシング部部長。(成都=新華社記者/単濤)
8日、成都イトーヨーカ堂双楠店の食品売り場に並んだQRコード付きの「顔が見える」シリーズ商品。(成都=新華社記者/単濤)
▽1元あんパンが生んだ日中スタッフの団結
成都イトーヨーカ堂の現地化戦略は、中国人スタッフの自主的な提案によって支えられている。成都の消費者は新しい商品への関心が高く、同社は旬の商品を前面に押し出す売り場構成や、ライフスタイル提案型の販売手法を展開。地元の人々の「豊かな生活」への願いをくみ取ることを成長につなげている。
2000年頃に名物商品をつくろうと売り出した「1元あんパン」は、日本人と中国人が協力して徹夜で製造に当たり、1日5万個の大ヒットとなった。山本氏は「この経験が日中スタッフの強い結束を生んだ」と語る。シャンシャン(香香)帰国時に「パンダすし」を、最近では大ヒット映画「ナタ2」の関連商品を展開するなど、時事ネタを巧みに取り入れた企画の多くは中国人スタッフの発案によるものだという。
8日、成都イトーヨーカ堂双楠店の食品売り場に並んだあんパン。(成都=新華社記者/単濤)
▽「双循環」促進で地域貢献
貿易環境の複雑化で輸出企業に影響が出る中、成都イトーヨーカ堂は中国の「双循環」(国内の大循環を主体とし、国内循環と国際循環が相互促進する)という経済発展戦略の下、地域経済の活性化に積極的に貢献している。
成都イトーヨーカ堂建設路店で展開する「川渝外貿優品」展示販売。(4月28日撮影、成都=新華社配信)
4月に始めたプロジェクト「川渝外貿優品」では、四川省と重慶市の輸出企業を対象に、店舗の特設会場での展示販売や電子商取引(EC)サイトを通じたマーケティング支援を実施。山本氏は「将来的には中国の商品を日本のイトーヨーカ堂で販売し、さらなる販路拡大を促すことも考えている」と語り、日中両市場をつなぐ役割への意欲を示した。
中国で初めて配属された北京市の「西直門店」での経験を振り返り、「中国人スタッフに温かく迎えられ、中国が大好きになった」と語る山本氏。「日中は互いに尊重し、認め合うことが大事だ」と強調し、「人の行き来がもっと活発になれば理解が深まり、ともに成長できる可能性も広がる」と両国の交流強化に期待を寄せた。(記者/単濤、邱虹、李倩薇)
成都イトーヨーカ堂建設路店で展開する「川渝外貿優品」展示販売。(4月28日撮影、成都=新華社配信)