中国の科学者が開発した誘電体エネルギー貯蔵材料のサンプル。(4月10日撮影、南京=新華社配信)
【新華社南京4月28日】中国江蘇省の南京航空航天大学は、同大の李偉偉(り・いい)教授と清華大学の南策文(なん・さくぶん)院士(アカデミー会員)らが、新型の誘電体エネルギー貯蔵材料を共同開発したと発表した。エネルギー密度は従来の商用誘電体エネルギー貯蔵材料の数十倍から数百倍に達し、次世代高出力パルス技術の中核部品となることが期待されている。研究成果はこのほど、国際学術誌サイエンス電子版に掲載された。
李氏によると、誘電体エネルギー貯蔵キャパシタは、生活のさまざまな場面で使用されている。瞬時にエネルギーを放出できる「パワー増幅器」であり、IC基板や植込み型除細動器(ICD)、新エネルギー車、風力発電所に至るまで幅広く活用されている。
一方で現在の商用キャパシタは、材料の電気化学的特性の限界から高出力密度と高エネルギー密度の両立ができないという矛盾を抱えている。李氏は「(現行のキャパシタは)出力密度は高いがエネルギー密度は低く、絶縁破壊を起こしやすい。われわれは、急速な充放電が可能で、安全性も備えた新たな高密度材料の開発を目指した」と述べた。
研究チームは3年以上の探究の末、樹枝状ナノ複合構造を設計し、一辺の長さが5ミリの新型誘電体エネルギー貯蔵材料のサンプルを開発。サンプル上には直径30ミクロンのエネルギー貯蔵ユニットが複数配置され、実験では、瞬時放電に要する時間はわずか3・3マイクロ秒、充放電サイクルは100億回に達し、マイナス100度から170度の環境下で安定した動作が確認できた。
李氏は「重要なのはサンプルのエネルギー密度が1立方センチ当たり215・8ジュールに達した点で、主流の商用キャパシタは1・2~5ジュールにとどまる」と説明。今後より大型のシリコンキャパシタの開発に取り組み、産業化に向けて着実に歩みを進めていく考えを示した。(記者/陳席元)