米国からの「関税の津波」に見舞われるアフリカ経済

米国からの「関税の津波」に見舞われるアフリカ経済

新華社 | 2025-04-27 23:05:30

レソトの首都マセルの風景。(2024年3月11日、ドローンから、マセル=新華社記者/張誉東)

 【新華社アディスアベバ4月27日】アフリカ南部のレソトは国連が認定する後発開発途上国の一つで、かつてトランプ米大統領から「誰も聞いたことがない国」と表現されたことがある。繊維製品の輸出に大きく依存しているが、米国から50%のいわゆる「対等関税」を課せられ、対応に苦慮している。

 米国政府が推し進める関税政策は、世界各地で広範な議論と経済的混乱を引き起こしている。発展途上国が最も集中するアフリカ大陸にとって、今回の「関税の津波」の衝撃は特に甚大であり、経済発展を脅かし、工業化を阻害している。

 アフリカ諸国の経済は総じて規模が小さく、発展の程度も低い。経済構造は単一で、一次産品輸出に依存していることから、外部リスクへの耐性が相対的に弱く、特に輸出主導型の国は影響を受けやすい。国連が認定する46の後発開発途上国のうち、33カ国がアフリカに集中しており、これらの国々は米国との貿易規模が小さいにもかかわらず、高額な「対等関税」を一方的に課せられ、負担能力との間に大きなギャップが生じている。これは米国の関税政策が実際には「不平等」であることを浮き彫りにしている。

 国連アフリカ経済委員会(UNECA)のカルロス・ロペス前事務局長は、レソトでは衣料品輸出が基幹産業で、半数以上が米国向けだと指摘。米国の関税政策は、レソトの衣料品加工業に大打撃を与え、輸出の減少、工場の操業停止、労働者の大量失業を招くとの見方を示した。

 南アフリカでは自動車産業が対米輸出総額の22%を占める。米国が輸入自動車への追加関税を発動したことで、同国の自動車産業も深刻な影響を受けている。ロペス氏は「アフリカ諸国は、現行の国際貿易体制の下で衣料品、繊維、軽工業製造、農産物加工などの輸出主導型産業を発展させてきたが、これらの産業は関税の影響を非常に受けやすい。アフリカ諸国はグローバルバリューチェーンへの融合に多大な努力を払ってきたが、今は逆に懲罰を受けている」と述べた。

19日、米ニューヨークで人員削減や追加関税、不法移民の強制送還などの政策に抗議する集会に参加する人々。(ニューヨーク=新華社記者/劉亜南)

 米国の関税政策は、アフリカ諸国の経済に一連の悪影響を及ぼす。輸出収入の減少は外貨準備の減少につながり、自国通貨は切り下げ圧力に直面する。通貨安は輸入品の価格を間接的に押し上げ、国民の生活費を高騰させる。輸出収入の減少とマクロ経済の悪化は、一部のアフリカ諸国の債務返済能力を低下させ、債務リスクを増大させるほか、ソブリン債務危機を引き起こしやすくし、これらに国々の資金調達能力をさらに弱める。

 潜在的な影響はこれだけにとどまらない。米国の関税障壁により、アフリカ企業は輸出を通じた技術革新と産業転換に向けた資金の蓄積が困難となり、工業化のプロセスが阻害され、グローバルバリューチェーンの低位に固定化される。

 エチオピア政策研究所のバレウ・デミッセ上級顧問は、エチオピアは輸入代替戦略を進めているものの、依然として主要な機械設備を輸入する必要があると指摘。通貨安によるコスト上昇が避けられない中、産業チェーンが原材料供給や部品製造などへ進出するための努力が阻害されることに懸念を示した。

 米国の変転きわまりない貿易政策に対し、アフリカ各国は自らの立ち位置と対応策を見直しつつある。アフリカ諸国は、アフリカ大陸自由貿易圏協定(AfCFTA)を積極的に推進するほか、域内関税の撤廃を通じてアフリカ内の貿易と投資を促進。地域的なバリューチェーンとスケールメリットを確立し、グローバルな貿易構造におけるアフリカの地位とリスク耐性を高めようとしている。同協定は現在までにアフリカ連合(AU)の55加盟国のうち47カ国が批准しており、世界銀行も同協定が2035年までに3千万人のアフリカの人々を極度の貧困から脱却させ、アフリカの収入を4500億ドル(1ドル=約144円)増加させ、総輸出量を約29%増加させると予測している。

 米国の追加関税はアフリカにとって危機である一方、変革を加速させる好機ともなり得る。短期的には輸出の減少や通貨安、債務圧力の増大により経済の強靭(きょうじん)性が試されることになるが、中期的には市場の多角化や地域統合、産業の高度化を通じてグローバルサウスの貿易ネットワークへの統合を加速させることができる。ただし、このプロセスにはインフラ整備や技術移転、貿易金融などの面で国際社会の支援が必要となる。

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