四川省眉山市で「泡菜」の生産盛ん 蘇東坡の故郷から世界へ
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四川省眉山市で「泡菜」の生産盛ん 蘇東坡の故郷から世界へ

新華社 | 2025-04-17 16:43:27

眉山市東坡区の四川老壇子食品に展示された泡菜の甕(かめ)。(3月20日撮影、眉山=新華社記者/王灝)

 【新華社成都4月17日】中国宋代の文豪、蘇東坡(そ・とうば)の故郷である四川省眉山市は、乳酸発酵させた漬物「泡菜(パオツァイ)」の一大産地として知られる。「一碗の飯、一つまみの塩、一皿の大根」の「三白飯」をこよなく愛したとされる蘇東坡は、泡菜を食すのを好んだだけでなく、自分でも漬けたとされ、眉山の漬物はこれを記念し「東坡泡菜」とも呼ばれる。

 眉山市の泡菜の生産額は2024年、225億元(1元=約19円)に上った。中国市場で3分の1のシェアを占めるだけでなく、100以上の国と地域にも輸出されている。

 市最大の泡菜企業の一つである吉香居食品は韓国や日本、シンガポールなど30カ国以上に製品を輸出し、泡菜の国際規格制定にも参加している。王艶麗(おう・えんれい)副総経理は、若い世代の間ではヘルシーで携帯しやすい小型の製品へのニーズが高まっているとし、市場の変化に合わせ、おやつや軽食、食事の付け合わせなど多様な消費場面への対応を図っていると述べた。

眉山市東坡区にある四川老壇子食品に並んだ泡菜の甕(かめ)。(3月20日撮影、眉山=新華社記者/王灝)

 伝統的な食品ながら、現在では生産に人工知能(AI)も活用されている。同社の泡菜工場の責任者を務める王威(おう・い)さんは「最新のAI視覚アルゴリズムを導入し、外観や色の規格に合わないものや、黒い斑点のある不良品の大根漬けを選別することで製品の品質を確保している」と語る。

 工場では大規模な生産が可能だが、本場の泡菜の味をどれだけ保てるかは各社が苦心するポイントだ。同市にある四川東坡中国泡菜産業技術研究院の汪冬冬(おう・とうとう)総工程師は「工業生産による泡菜は生産規模や標準化といった点で優位性を持つものの、味わいの深さは伝統的な家庭での自然発酵による泡菜に全く及ばない」と断言する。

眉山市にある吉香居食品の泡菜生産ラインで、慣れた手つきで選別や梱包(こんぽう)、運搬を行う作業員。(3月20日撮影、眉山=新華社記者/王灝)

 この難題を解決すべく、研究院の専門家チームは民間から伝統的な泡菜のサンプルを大量に収集し、微生物の集合(マイクロバイオーム)の分析や風味物質の解析などの手段を通じ、泡菜の「黄金レシピ」の再現を試みている。

 泡菜の製造には、微生物による複雑な発酵過程から味と香りの絶妙なバランスまであらゆる要素が重要になる。「泡菜に使う香辛料1種類だけでも揮発性風味物質が100種類余り含まれている」と汪氏。こうした繊細な風味構成こそが、伝統的な泡菜独特の味わいを生み出しているという。

四川省成都市で開催された第112回全国糖酒商品交易会で、眉山市産の泡菜を試食するバイヤー。(3月25日撮影、眉山=新華社配信)

 四川省の無形文化遺産に登録されている「老壇子泡菜製作技術」の4代目伝承者、何艶平(か・えんへい)さんは、四川省の多くの家庭には泡菜を漬ける甕(かめ)があり、一年を通して唐辛子や葉生姜、青菜、大根などの旬の食材が漬け込まれていると語る。この甕の中で熟成される豊かな酸味と香りを持つ赤みがかった漬け液は「老母水」と呼ばれ、「この『生きた水』が味付けの要となり、新しい泡菜を発酵させるもとになる」。

 何さんの工房には数百個の陶製の甕が整然と並び、さまざまな季節の野菜が「老母水」の中で静かに熟成を待っていた。「発酵を繰り返すことで、甕の中には安定したマイクロバイオームが形成されている。この微生物の集合が効率的な『泡菜生産チーム』になり、みんなで協力して泡菜の安全性やおいしさ、健康を確保している」と何さんは語った。

四川省成都市で開催された第112回全国糖酒商品交易会で、眉山市産の泡菜を試食するバイヤー。(3月25日撮影、眉山=新華社配信)

 成都市で3月に開かれた第112回全国糖酒商品交易会でも、眉山市の泡菜企業による展示が全国各地のバイヤーの注目を集めた。会期中に発表された「中国健康泡菜白書」によると、中国の泡菜産業はすでに産業全体をカバーする標準化された生産・安全管理体制を確立し、技術革新による産業の高度化も進んでいる。「減塩」や「栄養機能」などの新たな理念にも支えられ、伝統的な郷土の味である泡菜は世界市場へと広がりつつある。(記者/康錦謙、王灝)

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