半侵襲型BMI「北脳1号」。(3月20日撮影、北京=新華社記者/張漫子)
【新華社北京4月1日】薄くてフレキシブルな電極を患者の脳硬膜に貼りつける手術を行った後、まひの患者はパズルゲーム「テトリス」など細かい動きをする能力を手に入れ、話す能力を失った人は中国語でコミュニケーションを取ることができるようになる…まるでSFのような光景が北京で現実のものとなっている。
北京天壇病院で3月20日午前、中国が自主開発した半侵襲型ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)「北脳1号」の3例目となる体内埋め込み手術が成功した。最初の2例は、北京大学第一病院と首都医科大学宣武病院で前後して行われた。これまでのところ、3人の患者の容体は良好だ。このうちまひ患者は意思で(身体の)動きを制御できるようになり、筋萎縮性側索硬化症(ALS)で失語の患者は中国語で意思疎通できる能力を獲得した。
脳と外部機器との情報伝達を行う「情報スーパーハイウエー」であるBMIは、次世代のヒューマン・コンピューター・インタラクションとハイブリッド・インテリジェンスのための最先端技術だ。北京脳科学・類脳(脳型)研究所の羅敏敏(ら・びんびん)所長は「簡単に言うと、脳の電気信号の微妙な変化を捉え、脳の意図を読み取り、『意思』で『行動』を制御することで、手を動かさずに遠隔操作で機械を制御できるようにすることだ」と述べた。
電極はBMIの「耳」のようなもので、その性能によって「聞く」脳信号の量と質が決まる。
専門家は、「北脳1号」は中国が開発したフレキシブルな高密度の皮質脳波電極を統合し、128のチャンネルで同時に収集できる信号の流束は世界の同種製品の中で首位になっているとの認識を示した。
羅氏はわずか数マイクロメートルの厚さしかない超薄型電極を手にしながら「患者3人の大脳皮質への『北脳1号』の埋め込みが成功したことは、BMIを埋め込んだ脳のチャンネル数において、中国が開発した皮質脳波無線BMIが世界記録を破ったことを意味する」と述べた。
医療機器の製造・販売などを手がける北京芯智達神経技術の事業開発ディレクター、李園(り・えん)氏は、「北脳1号」の薄膜電極はフレキシブルなポリマー素材を採用し、生体適合性が高く、素材が柔らかく、人間の脳硬膜や大脳皮質によく密着し、高精度の信号を取得できると説明した。
「北脳1号」は、患者の脳の電気信号を意図として正確に読み取る三つの重要な中核技術も攻略した。一つ目は、高度に統合されたマイクロホストで、受信したハイスループット、低消費電力の信号処理を担当する。二つ目は、次世代の短距離無線通信技術で、信号の低消費電力、高帯域幅データ伝送を担当する。三つ目は、リアルタイムで正確なマルチシナリオの符号化・復号アルゴリズムで、微細な動きと高精度な中国語の解読を担当する。アルゴリズム、通信、信号処理、この三つが不可欠だという。
同日に「北脳1号」の臨床検証を行った首都医科大学付属北京天壇病院の神経外科専門家で中国科学院院士(アカデミー会員)の趙継宗(ちょう・けいそう)氏は、中国では「北脳1号」や「北脳2号」などのMBIの成果が実用化に向けて進んでおり、発展のために新たな原動力を育成する重要な支えを提供していると述べた。