江永県蒲尾村にある女書の保護や発展などを担う文化施設「女書生態園」で、女書で「福」の字を書く女書伝承人の胡欣(こ・きん)さん。(2020年1月16日撮影、永州=新華社記者/柳王敏)
【新華社長沙3月19日】中国湖南省永州市江永県の瀟(しょう)水流域に伝わる「江永女書」は世界で唯一の女性文字として、長い間神秘のベールに包まれてきた。元来、地元女性の間だけで伝承された「女書」とその文化に深く根ざした「坐歌堂」や「闘牛祭り」などの伝統的な習俗は2006年に第1次国家級無形文化遺産に登録された。「女書」は現在、独特の文化現象として、江永の文化と観光を融合するシンボルになっている。
女書の起源は今も謎に包まれている。1982年11月から83年1月にかけて、中南民族学院(現在の中南民族大学)の宮哲兵(きゅう・てつへい)教授が湖南省南部の山岳地帯でヤオ族文化の調査を行った際、江永県の上江圩鎮蒲尾村の高銀仙(こう・ぎんせん)さんの家でこの神秘的な文字を発見。その後、発表した研究成果は国際的な言語学界の注目を集めた。
14日、江永県蒲尾村にある女書の保護や発展などを担う文化施設「女書生態園」。(永州=新華社記者/柳王敏)
日本の著名な女書研究者である遠藤織枝氏は、女書文献の体系的な整理と翻訳を行い、その研究成果は国際学術界に広く貢献した。遠藤氏は女書について、漢字教育を受けられなかった女性たちが創造した独自の文字であり、中国の民間文化の創造力を体現していると指摘。この文字があったからこそ、当時の女性たちの歴史や思いが現代にまで伝えられたとの見方を示している。
女書の書体は独特で、右上がりに傾斜した菱形を呈する。筆記は上から下へ、右から左へと進められ、句読点はない。筆画は均一で細く、字面は細長く、まるで優雅に舞う女性をほうふつとさせる。
14日、江永県蒲尾村にある女書の保護や発展などを担う文化施設「女書生態園」で撮影した女書に関する研究書籍。中央は日本人学者、遠藤織枝氏の研究成果。(永州=新華社記者/柳王敏)
江永県ではここ数年、女書文化の広報活動に力を入れ、女書に関連した文化観光を推進しており、多くの人が同県を訪れて女書を知り、学んでいる。昨年の夏には女書と現地の民俗を忠実に記録したドキュメンタリー映画「密語者」が中国で公開され、大きな反響を呼んだ。現在、女書文化は多面的に伝承され、地域的な広がりを見せており、女書が示す文字の美しさと文化の創造力が一層顕著に現れている。(記者/柳王敏)
江永県蒲尾村にある女書の保護や発展などを担う文化施設「女書生態園」で、女書を教える伝承人の胡欣(こ・きん)さん。(2019年2月3日撮影、永州=新華社記者/柳王敏)
江永県上江圩鎮蒲尾村にある、女書伝承人の高銀仙(こう・ぎんせん)さん(1902~1990)の故居。(2024年4月11日撮影、永州=新華社記者/柳王敏)
江永県蒲尾村にある女書の保護や発展などを担う文化施設「女書生態園」の女書壁。大きい文字:江永女書。小さい文字:(右)文化瑰宝、(左)世界一絶。(2023年5月18日撮影、永州=新華社記者/柳王敏)
女書で書かれた作品「沁園春・雪」。(資料写真、永州=新華社配信)