中国の科学者が開発した光子クロックプロセッサー。(北京=新華社配信)
【新華社北京3月9日】中国の科学者が光子クロックを使用したプロセッサーの開発に世界で初めて成功し、研究成果をこのほど、国際学術誌ネイチャー・エレクトロニクスに発表した。チップ上で光を「疾走」させる革新的技術で、時間制御の速度は従来の100倍以上に向上。精度は数十億分の1秒に達する。演算能力と効率が飛躍的に高まり、スマートコンピューティングや6G(第6世代移動通信システム)通信、航空・宇宙リモートセンシングなど複数の分野での応用が見込まれる。
プロセッサーの情報処理にとって時間制御は極めて重要で、その速度と精度が性能を左右する。時間はクロックで制御するが、電子発振器でクロック信号を生成する従来の電子プロセッサーでは高周波信号の生成時に帯域幅の狭さや信号の歪みが生じ、消費電力も高かった。光電子システムでも、光学信号と電子クロックとの間の周波数の不一致により同期が困難になり、処理精度や情報伝送速度を低下させていた。
北京大学電子学院の常林(じょう・りん)研究員と中国科学院空天信息創新(航空宇宙情報イノベーション)研究院の李王哲(り・おうてつ)研究員による合同研究チームは、量産可能で超低損失な窒化ケイ素素材の光子クロックチップをベースに、光周波数コムを通じて高精度、低ノイズのクロック信号を生成する技術を開発。従来の電子チップが抱えていたクロック帯域幅、消費電力、ノイズなど性能面のボトルネックを解消した。
常氏によると、光子クロックを使用したプロセッサーは光を媒介に、光で発生させたクロック信号を時間の基準にして情報の伝送と処理を行う。従来は高価なハードウェアと複雑な操作が必要だったが、研究チームは完全なチップ化に成功。一つのプロセッサーで5Gや6G、ミリ波レーダーなど異なる電磁波帯の信号を統合的に生成させ、センシングや通信など複数の機能を実現できるようにした。革新的な設計はハードウェア構造を簡素化し、システムの複雑性とコストも大幅に低減した。
研究チームは現在、光子クロックプロセッサーの産業化に取り組んでおり、将来はより高速な電子回路との組み合わせによるスマートコンピューティングの演算能力の飛躍的向上、スマートフォンなどのデバイスの消費電力やコストの大幅削減、自動運転の感知精度や応答速度の向上など、さまざまな分野で活用され、関連産業の急速な発展を促すことが期待される。(記者/魏夢佳)