下水を熱源としたヒートポンプ室で巡回点検をする李麗麗氏(中央)。(2月19日撮影、太原=新華社配信/梁濤)
【新華社太原3月6日】中国で5日に開幕した第14期全国人民代表大会(全人代)第3回会議で、山西省の下水処理企業、山西国際能源集団水務投資管理の首席エンジニアである李麗麗(り・れいれい)代表(39)は、再生水管路ネットワークの建設強化を提案した。李氏は、この「最後の1キロ(ラストワンマイル)」の問題を解決することで、再生水利用の可能性を大きく広げられると考えている。
中国はここ数年、2030年までに二酸化炭素(CO2)排出量を減少転換させ、60年までに実質ゼロにすることを目指して取り組んでいる。李氏は、この「双炭(ダブルカーボン)」目標が水質汚染の防止、改善への取り組みに大きく影響し、環境保護基準や監督管理がますます厳しくなっていると感じたという。
下水処理場でマイクロ風力発電システムの設置について同僚らと議論する李麗麗氏(左から4人目)。(1月13日撮影、太原=新華社配信/韓万成)
そこで李氏は自身の仕事を踏まえ、これまでに黄河流域の省や自治区における再生水利用の強化や、グリーン(環境配慮型)・低炭素モデル工場の建設加速など18項目を提案。関係部門から前向きな返答があり、業界の発展が促された。
李氏が勤務する下水処理場は、この業界の発展の縮図と言える。工場の建設から20年で、工場単体の下水処理能力は当初の1日2万トンから今では8万トンにまで増加した。昨年にはグリーン・低炭素モデル工場となり、生物反応槽の上部と建物の屋根に太陽光発電パネルを設置した。工場の敷地の4分の1で太陽光発電による「グリーン電力」を利用し、年間で50万~60万元(1元=約21円)の電気代を節約できるようになった。
2月28日、生物反応槽で同僚と共に溶存酸素計のデータを確認する李麗麗氏(左)。(太原=新華社配信/荊芸萱)
「双炭」目標に向けて取り組む中で、新しい技術や製品も生まれた。李氏の説明によると、下水を熱源としたヒートポンプによる暖房と熱の供給で集中暖房の費用を節約できるほか、再生水をトイレの洗浄や緑化用として電力会社や学校などに販売したり、下水処理で発生した汚泥を電力会社に運んで発電に利用したりできるという。
李氏は「今、管路網の整備が不十分なことが再生水利用における最大の問題となっている。再生水管路網の建設を上水道管網と同等に重要と位置づけ、再生水をより便利に使えるようにし、持続可能な発展を支えていくべきだ」と語った。(記者/王学濤)
2月28日、検査室で排水の水質を検査する李麗麗氏。(太原=新華社配信/賈宇)
生物反応槽で同僚と共に太陽光発電システムの巡回点検をする李麗麗氏(左)。(2月19日撮影、太原=新華社配信/梁濤)