中国の科学者、「嫦娥6号」試料から月裏側の磁場データを取得

中国の科学者、「嫦娥6号」試料から月裏側の磁場データを取得

新華社 | 2024-12-22 16:40:25

   20日、中国科学院地質・地球物理研究所で、研究成果の概略を示すスライドの前で撮影に応じる蔡書慧副研究員(右から2人目)と研究チームのメンバー。(北京=新華社記者/金立旺)

   【新華社北京12月22日】月はかつて強力な磁場を持っていたとされる。中国の科学者は月探査機「嫦娥(じょうが)6号」が持ち帰った試料の研究を通じ、月面裏側の「古月磁場」のデータを初めて取得。磁場の中・後期の進化に関するデータの空白を埋めた。

   中国科学院の研究チームが、嫦娥6号が今年6月に持ち帰った試料から得た約28億年前の月の裏側の磁場のデータを分析。磁場の進化を研究し、月の磁場メカニズムの謎を解明する重要な手がかりをもたらした。研究成果は20日、国際学術誌ネイチャー電子版に掲載された。

   地球の磁場「地磁気」は宇宙線を遮り、大気や水などを保護することができ、生命の繁殖に適した環境を形成している。論文の筆頭著者、中国科学院地質・地球物理研究所の蔡書慧(さい・しょけい)副研究員によると、地磁気は地球の外核の導電性流体の運動により生じており、この「磁場ダイナモ」と呼ばれるメカニズムが持続的な「電力供給源」となって地磁気を長期にわたり発生させている。

   20日、中国科学院地質・地球物理研究所のゼロ磁場空間実験室で、撮影に応じる研究チームのメンバー。(北京=新華社記者/金立旺)

   一方で現在の月には、天体全体を覆う双極子磁場が存在しないことが衛星観測や月面調査で示されていたが、今回の研究で、かつては地球と同様の磁場ダイナモがあったことがわかった。月の磁場ダイナモの進化プロセスの解明は、月の内部構造、熱履歴(温度変化の履歴)、表面環境の進化を解き明かす上で大きな意義を持つ。

   科学界では、月には42億年前から35億年前まで活動的な磁場があり、その強さは現在の地磁気に近い水準だったが、約31億年前に急激に低下し、それ以降は低エネルギー状態で推移していると考えられていた。これまでに発表された古月磁場の強さに関するデータは主に30億年前のものであり、中・後期の進化に関するデータが長らく不足していた。

   20日、中国科学院地質・地球物理研究所のゼロ磁場空間実験室で、嫦娥6号が持ち帰った月試料を機器に装着する蔡書慧副研究員。(北京=新華社記者/金立旺)

   嫦娥6号の試料から得られた磁場データは約28億年前のもので、しかも月面の裏側であることから、古月磁場の時間的、空間的分布に対する人類の理解を大きく高めることになる。

   今回の研究では、ミリメートル級の玄武岩の岩片試料4点の磁気を分析。月の磁場が約28億年前に再び強くなったことがわかり、科学界の従来の認識とは異なる結果となった。

   20日、中国科学院地質・地球物理研究所のゼロ磁場空間実験室で、嫦娥6号が持ち帰った月試料を準備する蔡書慧副研究員。(北京=新華社記者/金立旺)

   蔡氏は「約28億年前に磁場ダイナモの主要なエネルギー源に変化が生じたか、当初の駆動メカニズムが再び強まった可能性がある」と説明した。

   ネイチャーの査読者は、今回の研究が月の裏側の玄武岩を厳密に分析し、初めて古月磁場の測定結果を提供した点を評価。月の磁場に対する人類の理解向上に大きく貢献したとの見方を示した。

   20日、中国科学院地質・地球物理研究所のゼロ磁場空間実験室で、嫦娥6号が持ち帰った月試料を機器に装着する蔡書慧副研究員(奥)。(北京=新華社記者/金立旺)

   20日、中国科学院地質・地球物理研究所で、研究成果の概略を示すスライドの前で撮影に応じる蔡書慧副研究員。(北京=新華社記者/金立旺)

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