四川省成都市双流区永安鎮梨園村にある「シェア菜園」で農業体験をする同市市街地の住民。(2023年10月28日撮影、成都=新華社配信/李向雨)
【新華社北京12月20日】中国のネット上ではこのところ、「シェア菜園」がたびたび話題に上り、「週末はシェア菜園で野菜を育てよう」などと、休日は畑で自然の息吹に触れることを選ぶ都会の若者がますます増えている。
シェア菜園では、個人や団体が年間数百~1万元(1元=約21円)ほどの価格で土地を貸し出し、技術的な支援を提供する。借り主は日々の栽培や世話を引き受け、その土地で生産された農産物を手に入れる。「農家楽(アグリツーリズム)」の日帰り体験とは異なり、シェア菜園は、種まきから耕作、草むしり、収穫まで一通りの農作業を体験できる。
上海市閔行(びんこう)区にある青安農場には現在三つの拠点があり、うち一つはすでに区画が埋まっている。オーナーの李孝青(り・こうせい)さんは、2022年に大規模経営を開始して以来黒字を維持しており、現在500人以上の顧客がいると説明。「今は順番待ちで、やめる人がいなければ区画が空かないので、場合によっては1、2カ月待ってもらうこともある」とのことで、シェア菜園の人気ぶりがうかがえる。
北京市朝陽区にある田園日記シェア菜園の創設者、趙恩濤(ちょう・おんとう)さんは、「都市住民には常に野菜栽培のニーズがあるが、土地の不足や時間的制約、技術的ハードルの高さから、多くの人が一歩踏み出せずにいた。そこへモバイルインターネットが台頭し、シェア菜園という形を知る人が増えた。人々が野菜を育てる理由はますます多様化している。リラックスのため、労働体験のため、親子の触れ合い、新鮮な野菜や果物を食べられるなど、人それぞれだ」と分析した。
シェア菜園は、特に子どものいる家庭に人気が高い。北京市のメディア業界で働く沈(しん)さんは、来年の農地賃貸借契約を更新したばかりだ。沈さんは「最も重視しているのは食の安全。シェア菜園では無農薬の有機野菜を栽培しているので、子どもに安心な野菜を食べさせることができる。その上、菜園を通じて子どもが自然に親しみ、農業の知識を身に着けることもでき、とても意義深い」と語った。
仕事が忙しかったり、栽培が苦手な一部の消費者のために、管理代行サービスを提供するシェア菜園もある。四川省成都市の金融業界で働く唐(とう)さんは、毎月時間を作って自分の区画を見に行く。普段は仕事で忙しく、毎週作物の世話をする時間が取れるとは限らないため、シェア菜園が提供する管理代行サービスや専門スタッフによる農作業代行を利用し、あまり時間とエネルギーを費やすことなく、田園のゆっくりとした時間を楽しんでいる。
さらに、非営利のシェア菜園を立ち上げた社区(コミュニティー)もある。新疆ウイグル自治区伊寧(グルジャ)市の文苑社区では、社区の住民委員会が草の生い茂った荒地を開墾して住民が無料で利用できるシェア菜園にした。住民は互いに助け合って一緒に種まきや水やりをし、共に収穫することで親睦を深めている。
都市住民にとってシェア菜園の小さな土地は、自然に親しみ、リラックスできる「楽園」であり、菜園提供者はこのモデルによって土地資源を有効活用でき、さらに起業家には新たなビジネスチャンスを提供している。
現代人のグリーン(環境配慮型)で健康的なライフスタイルに対する追求が高まるにつれ、伝統と現代、都会と自然を融合させた「シェア菜園」という余暇の過ごし方は、人々の生活体験における新たなトレンドとなりつつある。(記者/李卓璠)