天津市西青区にある「南水北調」中央ルート天津幹線プロジェクトの終点、外環河にある水門。(2021年5月27日、ドローンから、天津=新華社記者/孫凡越)
【新華社天津12月17日】中国北方地区の大都市、天津市は長い間干ばつに悩まされており、1970年代は地下水を過剰にくみ上げなければならなかった。水需給が最もひっ迫していた頃の給水量は1日当たり60万トンと下限まで減り、市民は塩分の混ざった汽水(きすい)を飲まざるを得ないほどだった。
こうした状況を変えたのは、新中国成立以降で初となる流域を跨ぐ大規模な給水プロジェクト-灤河(らんが、河北省北東部を流れる川)の水を天津市まで引く「引灤入津」プロジェクト(1983年通水)と中国南部の水を北部に送る「南水北調」プロジェクト(2014年12月通水)だった。同市は「二つの水源」の確保によって、地元の水資源配分を大幅に調整した。
「南水北調」プロジェクトの東・中央ルートの第1期プロジェクトが12日、全面通水から10周年を迎えた。同市水務局水資源処の趙岩(ちょう・がん)処長は「中央ルートから累計102億立方メートル余りの水が供給された。『南方の水』は都市給水の主要水源となり、給水区域は15行政区に広がり、1千万人以上に恩恵をもたらした。きれいな水が北に送られてきたことで、『おいしい水を飲みたい』という市民の夢がかなえられた」と語った。
天津北大港湿地自然保護区に生息する渡り鳥。(2020年11月12日に撮影、天津=新華社記者/趙子碩)
同市東麗区にある津浜浄水場の中央制御室では、職員らが慣れた手つきでコンピューターを操作していた。大型監視画には濁度やpH値などの水質データが24時間リアルタイムで表示されている。
浄水場は中央ルートから原水を受け入れる、市内で初めて建設された浄水場で、昨年1月に第2期拡張工事が完了した。十分な水源が確保できたことで現在、給水量のピーク値は1日当たり75万立方メートルに増えた。浄水場の岳瑩(がく・えい)マネージャーは「この規模は1980年代初め頃の市の全浄水施設能力に近い」と語った。
同市への年間給水量は10年間で0・06億立方メートルから10億3400万立方メートルに増加し、経済・社会発展を力強く支えたばかりか、地域の生態環境の大幅な改善につなげた。
海河の上空を舞うカモメ。(11月19日に撮影、天津=新華社記者/李然)
市内の複数の大きな湿地帯は現在、渡り鳥の季節に当たり、一年のうちで最もにぎやかな時期を迎えている。北大港湿地自然保護区の職員は「寒い冬が来ても、なかなか離れようとしない渡り鳥もいる」と語った。
同市は2016年以降、海河などの主要河川への恒常的な補水、湿地や一部の河川への定期的な補水を徐々に実現し、生態補水は年間10億立方メートルを上回るまでになった。
河川はよみがえり、湿地は回復し、野生動物も再び姿を現すようになった。北大港湿地を例に挙げると、保護区内で記録された渡り鳥の種類は17年の249種から現在の282種に増加した。(記者/黄江林、徐思鈺)